【山田美保子のミホコは見ていた!】相次ぐ番組収録中の事故、その深層
番組収録中の事故が続いているTBS。「1年7カ月で6件」とも報じられているが、筆者がもっとも衝撃を受けたのは、それより前の2022年11月、80年代アイドルの女性がクイズ企画で腰椎を圧迫骨折したことだった。
全治3カ月で、しばらくは自分で洗髪もできないほどの大怪我。ネガティブな気持ちになる日も多かった彼女は、日々献身的にサポートをしてくれていた夫に「これ以上迷惑はかけられない」と離婚を切り出したともいうからただ事ではない。
当然、局内では、このときの教訓が活かされているに違いないし、スタッフは事前に綿密なテストを行っているだろう。
だが、それを行うのは20代前半の若手ディレクターたち。彼らがスイスイとこなせたとしても、前述のアラ還アイドルが同じようにできるとは限らない。いや、絶対に無理だと言っていいだろう。
オーバー40のお笑い芸人らも同様で、トレーニングを積んだり摂生したりしていない者が急に大がかりなセットを前に体を張れば、事故に繋がる可能性は低くはない。
放送作家として筆者は、タレントや視聴者が体を張る企画を何本も考案してきたものだが、振り返れば無理が多々あった。会議室ではできると思ったものが実際にはクリアできないものだらけで、大がかりなセットを一回で無駄にしたこともある。
芸人に限って言えば、収録中の事故や怪我で自身が話題の中心になることをオイシイと考える者が少なくないのも事実だ。
今年7月、日本テレビ系の番組ロケ中にお尻を強打し、第2腰椎圧迫骨折の疑いとの診断を受けたロッチの中岡創一は、「何の後悔もありません」「本気になって我も忘れて夢中で挑める番組があることは本当に何にも代え難い」とコメントしている。生粋のバラエティ班ゆえ、筆者には、この中岡の言葉が理解できてしまうし、レギュラー番組を相手に大ごとにしたくない彼の気持ちも痛いほどよくわかる。
だが、こうしたバラエティ独特の“尺度”がまた現場に甘えをもたらしているのも事実だろう。「SASUKE」に続いて、女性版の「KUNOICHI」が大きな話題になったし、SASUKEを基にした「障害物レース」が2028年ロサンゼルスオリンピックの近代五種の新種目として採用されることで沸くTBSでは21日、「最強スポーツ男子頂上決戦2025冬」が放送される。熱き番組ファンや出演者のためにも、安全確認を一層徹底し、再発防止に努めてほしい。
