仲代達矢さん逝く 92歳 世界に誇る名優「人間の條件」「影武者」など主演 多くの後進「無名塾」で育成

 映画「人間の條件」や黒沢明監督の「影武者」などに主演し、主宰する「無名塾」で後進を育てた俳優で文化勲章受章者の仲代達矢(なかだい・たつや、本名元久=もとひさ)さんが肺炎のため死去したことが11日、「無名塾」の公式ホームページで発表された。92歳。東京都出身。娘で歌手・仲代奈緒がみとった。5~6月に石川・能登での復興公演舞台で反戦劇「肝っ玉おっ母と子供たち」への出演が最後だった。通夜・告別式は近親者のみで行い、お別れの会などの予定はないという。

 世界に名を響かせた名優が旅立った。

 最後に立った舞台は、能登半島地震の復興公演として5~6月に石川県七尾市の能登演劇堂で上演したブレヒトの反戦劇「肝っ玉おっ母と子供たち」。被災からの復興とともに戦争を知る世代として平和への思いを役に込め、約2時間半出ずっぱりの過酷な舞台をやりきった。「体力的に、果たして昔のようにできるか」と語りつつも、全身をなげうつような演技で喝采を浴びた。

 1952年に俳優座付養成所に4期生として入所後、千田是也氏に師事し「ハムレット」、「四谷怪談」など多数の舞台に立った。映画界でも彫りの深い顔立ちと重量感ある演技で注目され、小林正樹監督の映画「黒い河」などに出演した。同監督の大作「人間の條件」シリーズで、反戦思想ゆえに戦場で苦悩する主人公を演じきり、スター俳優の地位を確立した。

 黒沢明監督の作品では「用心棒」、「椿三十郎」で三船敏郎さん演じる用心棒と壮絶な一騎打ちを繰り広げる敵役を演じ、「天国と地獄」では誘拐犯を追いつめる警部役を好演。カンヌ国際映画祭の最高賞受賞作「影武者」や大作「乱」にも主演した。他にも成瀬巳喜男氏、岡本喜八氏、市川崑氏、五社英雄氏ら、日本を代表する映画監督の作品に多数出演し、存在感を発揮した。

 舞台と映画の両輪でキャリアを重ね、米アカデミー賞と世界三大映画祭(カンヌ・ヴェネツィア・ベルリン)の全てで出演映画が受賞するという功績を残し、役者として世界から高い評価を得たことを証明した。

 75年には俳優を養成する「無名塾」を俳優座養成所の後輩で妻の宮崎恭子さんと設立。おしどり夫婦として知られ、恭子さんは隆巴という筆名で脚本家としても活動し、仲代さんが俳優として主演した77年のドラマ「砂の器」(フジテレビ)や映画「いのちぼうにふろう」などをともに作り上げた。

 後進育成への尽力も実を結び、「無名塾」から役所広司、益岡徹、若村麻由美ら、今では日本を代表する俳優を多数輩出した。06年には“黒澤組”が映画作りのノウハウを教え、俳優を養成する「黒澤明アカデミー/黒澤明塾」が発足することになり、学長を務めた。近年は若き才能と組んだ作品も多く、小林政広監督の「日本の悲劇」、稲塚秀孝監督の「NORIN TEN-稲塚権次郎物語」などに出演して背中を見せ続けた。

 反戦、世界平和は仲代さんが訴え続けてきたテーマだった。「今、世界のどこかの国では戦争をやっています。優しく生きていこうよ」と呼びかけるように語った。その上で俳優として「最後だと思わないで稽古をしている」と90歳を超えても現役で続ける意欲を燃やしていた。来年3月に能登演劇堂で上演される舞台「等伯」の演出を手がけることも発表されており、まさに生涯現役を貫いた。

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