昨年９月２９日に老衰のため亡くなった国民的アニメ「ドラえもん」のドラえもん役で知られる声優で俳優の大山のぶ代さん（本名・山下羨代＝やました・のぶよ）を偲（しの）ぶ会が２９日、オークラ東京で行われた。２５０人が参列し、“ドラえもんファミリー”ら親交のあった声優仲間らが惜別の言葉を送った。

　最後は声優仲間らに見送られた。発起人の一人となった毒蝮三太夫（８９）は大山さんと２０１７年に亡くなった夫・砂川啓介さんの結婚式の司会をやるなど深い親交があった。１０年以上会っていなかったといい、「もっと話しておけばよかった。悔いばかりが残る」と心境を語った。

　大きな祭壇は大山さんが好んだという白の胡蝶蘭、スプレーカーネーション、紫のカーネーション、トルコキキョウなど約８０００本で彩られた。中央には映画「ドラえもん」のインタビューを受けた際の写真が置かれた。さらに２６年間声優を務めた「ドラえもん」の台本など思い出の品が約３０点並んだ。

　その祭壇前に立ち別れの言葉を述べた「ドラえもん」のしずか役の野村道子（８７）は「心からありがとうございました」と感謝した。大山さんが亡くなったことでテレビ朝日版第１期「ドラえもん」の主要キャスト唯一の存命者でもあり、報道陣からのお願いもあって、しずかの声で「ペコちゃん（大山さんの愛称）。長い間ありがとう。今も私はあなたに会いたいわ」と呼びかけた。

　大山さんからドラえもん役を引き継いだ水田わさび（５１）は「２０年前にとてつもなく大きくて太いバトンを受け取った。先輩たちがとても丈夫な、絶対に壊れることのないレールを２６年かけて敷いてくださっていたのでそれに甘えつつ、安心して毎週お芝居をしている」と感謝し、「（大山さんと）同じように子どもたちに元気を与え続けたい」と“ドラえもんファミリー”として誓った。

　声優仲間の野沢雅子（８８）は「ペコの声は本当に唯一無二です。みんなを笑顔にしてくれます。それが聞くことができないのはさみしいです。私はもうしばらくこちらで頑張ろうと思うので見守っていてくださいね。さよならは言いません」と惜しんだ。

　大山さんは、愛嬌（あいきょう）ある声で発せられた「ぼく、ドラえもん」のセリフで多くの子供たちにマネをされ、ドラえもんを誰からも愛される国民的キャラクターに育て上げた。羽佐間道夫（９１）は「不世出の人だから、大山さんを超える人はなかなか出てこなのではないかと思う」と功績をたたえた。