市川由紀乃 卵巣がん壮絶闘病経て変わった人生観 命の恩人・由紀さおりへ ファンへ歌声で届けるありがとう

 闘病生活を経ての変化を話す市川由紀乃
 闘病生活を経て復帰ライブを行う市川由紀乃
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 演歌歌手の市川由紀乃(49)が、昨年6月から半年間に及ぶ卵巣がんの治療による活動休止期間を経て、ステージに舞い戻る。19日に埼玉・サンシティ越谷市民ホール大ホールで、復帰後初の単独コンサート「ただいま!」を開催し、20日には今年の勝負曲に位置付ける復帰作「朧(おぼろ)」を発売する。復帰コンサートを目前にした市川に、壮絶な闘病生活と復帰ライブに挑む思いを聞いた。

 つらい闘病を経て、19日に復帰ライブに挑む市川の表情に、晴れやかな笑顔が宿る。「とにかくうれしい気持ち。皆さんに感謝です。たぶん一人の力ではここまで来られなかった。新たな歌手活動のスタートラインに立てるというか、そんな気持ちです」。喜びもひとしおだが、1年前は絶望の淵に突き落とされていた。

 2023年から24年初頭にかけて、鼻血、生理不順などの不調が市川を襲った。自らに「年もあるし、きっと大丈夫」と言い聞かせていたが、昨年5月に先輩歌手の由紀さおりに相談したところ「1回検査を受けた方が良い。私が信頼している先生を紹介するから。今から電話するから」と促され、病院を受診する形になった。

 検査翌日に病院から「すぐに来てください」と連絡が入り、医師から「卵巣腫瘍の疑いがあるので、今すぐ仕事をストップして、手術をします」と告げられた。突然の宣告に「目の前が真っ暗。言葉が出なかった」と心をかき乱された。女性特有の臓器を摘出することに「複雑な思い」を抱いたが、歌い続けるための決断は揺るがなかった。

 昨年7月に卵巣の摘出手術を受け、意識が戻ると激痛が走った。「何かに包まっている感覚があって、いっそ殺してくれと思った。この痛みには耐えられないって」。看護師2人に体を起こしてもらわないとトイレにも行けず、「何とも言えない敗北感を味わった」という。

 手術から10日後に退院しても、苦悩は続いた。病理検査で「卵巣がん」と判明し、8月から抗がん剤治療がスタート。ロングヘアがごっそりと抜け、鏡を見て「自分じゃない」と落ち込んだ。衝撃的な出来事だったが、毎朝鏡を見て“自分”を受け入れた。治療期間中は歌うこともできず、音楽番組が始まると「聞きたくない」と即座にチャンネルを変えた。

 治療に弱気になった頃に由紀へ「もう一度歌える日が来た時には、またご指導お願いします」とメールを送ったところ、ほどなくして「もう一度歌える日が来たらじゃなくて、もう一度歌うの。何のために苦しみに耐えているの。歌うためでしょ。あなたはもう一度歌うのよ」と返信が来た。先輩からの“愛の喝”を受け、文面が見えなくなるほど泣いたという。

 命の恩人である由紀にまたも救われ、抗がん剤治療を終えた12月上旬以降は作曲家・幸耕平氏のもとでレッスンを受け、カラオケボックスで一人練習。開腹手術を受け、歌から離れた時間も長かっただけに「歌は前より力の入れ具合が変わった」というが、「前に比べたらまだかもしれないけど、だいぶ戻って来た」と復調の兆しがある。

 がん治療を経て、人生観が「全ての人や物にありがとうと思うようになった。階段を上る時にも、手すりに『ありがとう』って」と変化。19日の復帰ライブは、ファンに向けて「ありがとう」を伝えるステージにするつもりだ。「皆さんのおかげで元気になりましたよと、歌声と言葉で伝えたい。歌っている自分が一番楽しいと思うので、本番の楽しさが皆さんにも伝わったらいいな」。つらい闘病生活を乗り越えた市川がこれからも数々のステージで美声を響かせる。

 ◇市川由紀乃(いちかわ・ゆきの)1976年1月8日生まれ。埼玉県出身。高校1年でNHKのど自慢に出場し、カラオケ大会で優勝を果たすなど、幼い頃から歌うことが大好き。93年に「おんなの祭り」でデビューし、16年にNHK紅白歌合戦に初出場。19年に日本レコード大賞で最優秀歌唱賞を受賞した。24年6月に卵巣がんの治療のため、芸能活動を休止。手術や抗がん剤治療を経て、今年3月にNHK「うたコン」から歌手活動を再開した。

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