水樹奈々 芽生えた柔軟さと遊び心 キャリアが築いた新視点 全力疾走で迎えた歌手デビュー25周年
声優で歌手の水樹奈々(45)がこのほど、デイリースポーツの取材に応じた。2025年に歌手デビュー25周年を迎えたレジェンド。19日に約2年8カ月ぶりのニューアルバム「CONTEMPORARY EMOTION」を発売し、12月からは全国7カ所全14公演のライブツアーも予定する。記念すべき年を迎えた今の心境と、25年の道のりを振り返る。
アニバーサリーイヤーを迎えた水樹は、感慨と感謝であふれていた。
「長い期間、コンスタントにCDをリリースさせていただいて、毎年ライブを行えるって、本当に幸せなこと。こんなに長く活動をやらせていただけているのは本当にファンの皆さんのおかげなので、改めて感謝の気持ちでいっぱいです」
長きにわたり最前線を走ってきた。97年にゲームのキャラクターで声優デビュー。00年にはシングル「想い」で歌手デビューした。当初は「ただ歌えることが幸せ」だったが、ライブなどの現場を重ねることで「何を届けたいのか」が明確になっていった。
根源にあったのは「応援ソングをつくりたい」という願いだった。02年に発売された5枚目シングル「POWER GATE」は明るく力強い歌で、ライブの定番曲にもなった。「最初のターニングポイント」だった。「そこから本当に前向きでいつも全力で取り組むっていう、音楽性や目標が明確になった」。パワフルな歌声でファンを魅了し続けた。
25周年には特別な思いがある。20周年だった20年は新型コロナ禍で「思う存分お祝いできなかった」。ファンからのパワーが活力の水樹にとっては、想像以上につらい時間だった。
「ライブが普通に開催できるように戻ってきた22年、みんながサイレントでペンライトを振ってくださった光景を見た瞬間にもうバーッて泣いて、涙が止まらなくて。1曲目から泣いちゃうなんて自分でもびっくりした。それぐらいライブができなかった時間が本当に苦しかったんだなと」
だからこそ、25周年はファンとの交流を大切にしたいと考えている。ニューアルバムではリリースイベントを予定し、12月には7カ所全14公演のツアーもスタートする。
「節目を迎えたからこそ、改めてファンの皆さんへの感謝を伝えられる1年にしたい」と、思いもより一層強まった。ツアーでは25周年だからこそできる演出を目指し「定番の枠組みを進化させたい」と頭を悩ませている。「発表できていないイベントなどもあるので、ぜひ楽しみにしていただけたら」とサプライズもあると明かした。
アルバムタイトルの日本語訳は「現代の感情」で、「今まさに湧き上がる感情をそのまま1枚にぎゅっと落とし込んだ」内容になった。幼少期からの演歌トレーニングを積んだことで培った「ベースの和メロ」「どこかノスタルジックな気持ちになる切ない泣きのフレーズ」を大切にしながら、「いろいろなエッセンスを追加した」という。「結構攻めてる曲が多い。節目を迎えてもまだまだ攻めていくという決意表明のような1枚」と新境地を見せる。
25年というキャリアの中で「新たな視点がたくさん持てるようになりました。すごく生真面目だったんですけど、ラフに考えられるようになってきた」と、柔軟さも武器になった。
「25周年という節目にして遅いかもしれないんですけど、『もうちょっと遊び心あってもいいんじゃない』って思えるようになってきた。なのでここからより面白い水樹奈々が出てくるんじゃないかなと思います」。これからも新たな“水樹GATE”を開き続け、ファンに深い愛を届ける。
◇水樹奈々(みずき・なな)1980年1月21日生まれ。愛媛県新居浜市出身。97年にゲームのキャラクターで声優デビュー。「NARUTO」など多くのアニメ作品に出演。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。09年に声優では初めてNHK紅白歌合戦に出場し、14年まで6年連続出場を果たした。11年12月には東京ドームで、16年9月には甲子園球場で、いずれも声優では初となるライブを開催。特技は書道。