犬450匹以上虐待の繁殖業者に有罪判決、獣医師免許なしで手術も 元刑事「より厳しい対応を」

 ペット事業を扱う会社が劣悪な環境で450匹以上の犬を虐待したなどとして、動物愛護法違反などの罪に問われた会社役員・百瀬耕二被告(63)に対し、長野地裁松本支部は10日、懲役1年、執行猶予3年、罰金10万円の判決を言い渡した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は12日、デイリースポーツの取材に対して見解を語った。

 起訴状などによると、百瀬被告は2021年、2カ所の犬舎で飼育していた犬を不衛生な環境の中で衰弱させ、虐待したとしている。また、獣医師免許がないにもかかわらず、妊娠した5匹の犬に対して麻酔なしで帝王切開をして腹部を傷つけ、さらに8匹の犬に予防注射を受けさせなかった狂犬病予防法違反罪でも起訴された。

 裁判長は判決理由で「狭いケージに閉じ込められたまま必要な世話を受けず、多くの犬が皮膚病などを発症していた」とし、「極めて悪質なネグレクト」と指摘した。

 小川氏は「ビジネスとして扱う400匹以上の犬を非常に悪劣な環境で飼育し、不衛生な環境下で衰弱した犬もいる。獣医師免許もないのに、妊娠した5匹の犬に麻酔もしないで帝王切開したというのは通常では考えられない。繁殖業者、いわゆるブリーダーなのに、狂犬病とか必要な予防接種を犬にしていないという事も通常では考えられない」と説明し、「執行猶予が付くなど刑が軽すぎる」とも指摘した。

 今回の量刑については、百瀬被告が既にブリーダー業を廃業したことを考慮し、刑の執行が猶予されたという。

 小川氏は「廃業するのは当たり前です。逆に廃業しないなんて許されない。ただ、廃業した者が同じ業種に勤めてはいけないというルールはない。違う者のところで働くことも考えられるので、こうして罰せられた者が同じ業界で絶対に働いてはいけないといったことも必要になってくるのではないか。ペットを飼っている人たちに言わせると、今回の判決は軽すぎるという声が聞こえてくる」と問題提起した。

 同氏は獣医師免許を持たずに手術したことも問題視。弁護側は帝王切開で犬を傷つけたことについて「鎮痛薬で痛みを感じない状態だった」と罪の成立を否定したが、裁判長は「無用な苦痛を与えた」と退けている。

 小川氏は「獣医師免許のある医者がいる動物病院で対応してもらうのが普通であって、鎮痛剤を与えようが、手術してはいけない。こうしたケースが起きた場合、行政としてブリーダーの資格停止などを厳しくやるべき。行政だけでなく、動物愛護法違反になる場合は警察とかでもブリーダーに対する見回りや立ち入り調査を頻繁に行う必要がある」と提言した。

 小川氏は「ペットを家族同然で飼っている人たちがいる中、以前から動物はモノ扱いだった。ペットを傷つけても『器物損壊』となっていたが、法律が改正されて、動物愛護法違反で多少は罪が重くなり、単なる器物損壊で済むことにはならなくなった。今回の被害者は商品として扱われている犬。動物愛護法の中でも、ブリーダーやペットショップなど動物をビジネスとして扱う『業』に従事する者にはもっと厳しく対応することも必要ではないか」と訴えた。

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