藤井聡太七冠の師匠・杉本昌隆八段 エッセー集が異例ヒット 連載支えた弟子の快進撃「成長スピード実感」

 将棋の藤井聡太七冠(21=竜王・名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖)が前人未到の八冠達成へまい進する中、師匠である杉本昌隆八段(54)への注目も高まっている。6月12日には師弟の日常などをつづったエッセー連載の書籍版「師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常」(文藝春秋)を発売。3カ月が経過した今も売り上げを伸ばし、4万3000部の大ヒットを記録している。プロ棋士として、作家として、そして師匠として-。“三刀流”の日々と、歴史的快挙にあと一歩と近づいた弟子への思いを語った。

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 エッセー集としては異例ともいえるヒットに、杉本八段は「大変光栄なことだと思ってます。自分の身近でも持ってる人が何人もいらっしゃって、それが非常にうれしかったですね」と目を細める。

 週刊文春で毎週連載しているコラムが今年4月に100回に到達し、それを1冊にまとめた。題材は将棋だけでなく、時事、野球などさまざま。対局を見ているだけでは分からない棋士の日常を、時折自虐も交えて笑いを誘いながらつづっている。「棋士の前に1人の人間。人間らしさを何か笑いに変えていければなと思っていました」という。

 毎週連載は初の試みで、当初は不安も大きかったという。「ネタが持つかと心配はしていました。公式戦の対局よりはるかに多くて、何とも複雑な気持ちになりますが」と笑いつつ、「棋士は将棋で自分を表現するものですけど、最近の私は文章で自分を表現していますね。書き始めてみるとネタの数が掲載回数に追いつかず、うれしい誤算でした」と“将棋エッセイスト”として成長も口にした。

 ネタ切れの恐怖で始まった連載を支えたのは、歴史的快挙を達成し続ける藤井七冠の存在だった。いまや年中タイトル戦に追われて記録を更新し続ける愛弟子。「連載1回目では藤井二冠で、今は2年たって七冠。2年でタイトルを5つ増やす棋士というのは、過去にもほとんど例がないので、藤井七冠の成長スピードを改めて実感する書籍でもありました」と話す。

 現在、藤井七冠は八冠目となる王座戦へ挑戦している最中。永瀬拓矢王座(31)相手に1勝1敗。あと2勝すれば、史上初の八冠制覇となる重要局面だ。2人は藤井四段の頃からの研究パートナーで、杉本八段も愛知県の研究室で研究する姿を見守ってきた。永瀬王座相手に「運命的なものを感じますね」と感じ入った。

 まな弟子が八冠をとったあかつきには、「彼とは酒を飲むイメージがないので…アイスコーヒーとケーキセットの方が合うような気がするので、カフェで祝いたいですね」とニッコリ。弟子を思う師匠のまなざしだった。

 ◆杉本昌隆(すぎもと・まさたか) 1968年11月13日、名古屋市出身。80年故・板谷進九段に弟子入りし、90年10月にプロ入り。2002年5月、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。19年に八段昇段。第77期順位戦で9勝1敗し、史上4位の年長記録となる50歳でのB級2組昇級。門下に藤井聡太七冠、室田伊緒女流二段ら。振り飛車党。「弟子・藤井聡太の学び方」(PHP文庫)など著書多数。

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