柏木由紀子、75歳 悲しみ乗り越え今を楽しむ 坂本九さん亡き後「おしゃれ」で前に進む
女優の柏木由紀子(75)が初のファッションブック「柏木由紀子ファッションクローゼット」(扶桑社)を22日に発売した。子役時代からモデルとして活躍し、現在は、日々の着こなしをSNSで発信。本作ではお気に入りの品々を公開し、魅了的な姿を披露している。「上を向いて歩こう」などの世界的ヒットで知られる夫・坂本九さん(享年43)を亡くしてから8月で38年。悲しみを乗り越え、今を楽しむ柏木に迫った。
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事務所の壁に飾られた特大写真の坂本九さんが優しいまなざしを向けている。「私がこんな本を出すなんて、びっくりしてるかもしれないですね」。柏木は、はにかんだような笑顔を見せた。
念願のファッションブックには「生きがい」という、おしゃれへのこだわりが詰められている。自身のクローゼットからお気に入りの洋服やアクセサリーなどを厳選して、自らコーディネート。軽やかな着こなしは、とても75歳とは思えない。
その秘密を尋ねると「私、時々、自分の年齢を忘れちゃうんですよ。もう年だからとか考えず、たまには着ない色を着てみたりするのも、いいんじゃないかなと思います」
最愛の夫を飛行機事故で亡くした1985年8月以降、黒い服ばかり着ていたという。半年後、夫に代わり広島のテレビ番組の司会を務める決心をした柏木は、自分を奮い立たせるように、鮮やかなピンクの服で新幹線に乗り込み、番組にはシャネルのピンク色のスーツで臨んだ。
「自分で意識して明るい服を着なきゃと思ったんです。気分が変わりました。着る物で自分の気持ちを上げられる。あの時から明るい色を着るようになりました」
元々、夫婦で番組に出演する際は2人分の衣装を選んでいた。代役で司会を務めた2年間も衣装や髪形、靴など自分で選び、楽しむことを心がけた。モデルを務めていた子ども時代から大好きだったおしゃれ心を取り戻しながら、柏木は前へ進んだ。
現在はSNSで日々のおしゃれを発信。フォロワーからの反応に「元気をいただいています」と話す。同年代のファンからは「お元気そうで安心しました」といった声が届けられることも。「いまだに坂本九や曲が、この年代の方たちの心に残っていてありがたいですね」。自身を案じてくれるファンに感謝し、事故からの年月に思いをはせる。
当時、小学生だった2人の娘は結婚してそれぞれ母に。「時間がたてばたつほど、いたらいいのにって思う時もある」と夫がいない寂しさを感じることもあるというが、「今は自分自身のことを考えて、楽しもうと毎日を過ごしています」とアクティブに生きる。
メロメロなのが本にも登場する愛犬のトイプードル、レア君。愛車のビートルに乗せて一緒にお出かけを楽しむ。意外な趣味はマージャン。結婚前に坂本さんから教えを受けていたといい、仲間と定期的に卓を囲む。
すでに頭の中には、本の第2弾のプランも温めており「今回は春版なので、秋の本ができたら。まだまだ見ていただきたい物があるんです」と意欲的だ。
「変わったと思います。こうやって人前で話をするのも得意じゃなかった。何もできなかったし、いつも頼ってましたから。ここまで来られたのは、自分でも結構、頑張ったなって思います」。たくましくなった自分を認め、ねぎらう。
坂本さんに伝えたいことを聞くと「いつも見守ってくれていると思うので。みんな元気でやってるので見ててね。応援しててね、そんな感じかな」。かみしめるように思いを明かした。
◆柏木由紀子(かしわぎ・ゆきこ)1947年12月24日生まれ。東京都出身。小学校時代に劇団「若草」入団、少女雑誌「女学生の友」でモデルとして活躍。64年「明日の夢があふれている」で映画デビュー。翌年「若い真珠」で歌手デビュー。ドラマ「細うで繁盛記」「華麗なる一族」などに出演。71年に坂本九さんと結婚。2004年に娘の大島花子、舞坂ゆき子と家族ユニット「ママエセフィーユ」を結成、ライブ活動などを行う。
