ロシア 証拠捏造へ核施設標的か ウクライナ原子力施設に相次いで砲撃
ウクライナ原子力規制監督局は6日、東部ハリコフで小型研究用原子炉がある「物理技術研究所」が同日、ロシア軍の砲撃を受け、複数の施設が損壊したと発表、「新たな核テロ」だとロシアを非難した。周囲の放射線量は正常と発表した。ロシア軍は2月24日の侵攻直後にチェルノブイリ原発、3月4日に南部ザポロジエ原発を制圧。核関連施設への攻撃を続けており、一方的に主張する「ウクライナ核武装の可能性」の証拠捏造(ねつぞう)のためではないかとの見方が出ている。
ロシア軍は4日にザポロジエ原発を砲撃して制圧。研修施設で火災が起きたほか、1号機の関連施設が損傷し、国際社会の強い非難を浴びたばかり。
ハリコフでも激しい攻撃が続く。同監督局によると、物理技術研究所の変電設備が全壊し、新たな核燃料が装てんされて始動段階に入っていた「中性子源センター」の施設が損傷した。地元治安当局は攻撃により「大規模な環境災害を招きかねない」と表明。ウクライナ側は、国内4原発のうちザポロジエに次ぐ規模の南ウクライナ原発へ向けてのロシアの進軍を懸念している。
ザポロジエ原発については、電力インフラを握って施設職員を管理下に置き、ウクライナ側に圧力を加える狙いもありそうだ。稼働中の原発への攻撃という前代未聞の事態に、国際社会に激震が走ったが、ロシア側が意に介す様子はない。
ソ連崩壊に伴い独立したウクライナは、ロシアや米英と1994年に交わした「ブダペスト覚書」に基づき、安全保障の約束と引き換えに核兵器をロシアに引き渡した。
プーチン大統領は侵攻理由として、ウクライナが核兵器の再保有を狙っていると主張したが、ウクライナは全面否定。国際原子力機関(IAEA)も核武装などの動きは捉えていない。だが、ロシアメディアは最近、86年に爆発事故が起きたチェルノブイリ原発周辺で放射性物質を使った「汚い爆弾」の開発が進められていたと根拠を示さずに報じた。
明海大の小谷哲男教授(安全保障論)はハリコフの物理化学研究所について「施設での作業はIAEAの管理下で行われている」と指摘した上で「ロシアが制圧すれば、プーチン氏の主張に沿って『秘密裏に核兵器を製造していた』とでっち上げるだろう」と話した。