ブレッド&バター「50周年スペシャルコンサート」DVD発売 傘寿アルバムの計画も
シティポップのレジェンド「ブレッド&バター」が先月、昨年10月のライブをDVD化した「ブレッド&バター50周年スペシャルコンサート~あの頃のまま~」をリリースした。今月24日には東京・EX THEATER ROPPONGI、28日にはビルボードライブ大阪で、DVDと同じくSKYE(鈴木茂、小原礼、林立夫、松任谷正隆)とライブを行う。今年でデビューから53年目を迎えた2人に、近況を聞いた。
ブレッド&バターは岩沢幸矢(さつや=77)と岩沢二弓(ふゆみ=72)の兄弟デュオ。活動が半世紀超のレジェンドだが、幸矢は「これ(音楽)以外ないですよ。何回もやめるって話があって、あの時やめてればなってことは何回も思ってますけど、また戻ってしまったところがあるから」と謙虚に笑った。
SKYEははっぴいえんど、サディスティック・ミカ・バンド、キャラメル・ママといった伝説のバンドのすご腕メンバーによるグループ。SKYEとしては昨年のライブでブレバタと初めて組んだが、ブレバタのデビュー直後にメンバーだったこともある林をはじめとして皆、兄弟とは長い付き合いだ。
山下達郎ら多くのカバーを生んだ名曲「ピンク・シャドウ」(74年)の成立にも、鈴木と林が深く関与した。幸矢は「あの頃はやりの16ビートみたいなことができればなと思った。僕が作った曲なんですけど、作った時はそんなに16という感じじゃなかった。一緒にレコーディングした連中がアレンジしてくれて、ああいう曲ができた」と振り返る。
SKYEの4人と同世代の二弓は「若い時から同じようなこと(音楽)を聴いてきてるからセンスもだいたい同じ。何も言わなくてもツーカーな感じですぐ音が出てくる」と相性の良さを語る。
SKYEとの顔合わせを、幸矢は「部活みたいな感じ」だったといい、二弓は「昔の人とやったら昔の音が出て、そこで急に和んじゃうみたいな感じ。持つべきものは友人だなという気はしますね」と友情に感謝した。
SKYEの4人と長く続いている理由について、幸矢は「エレキなんか弾いてると不良みたいなこと言われた時代だから、音楽やってる人が少ない中で、知り合った者同士が結ばれていくのは普通だったんじゃないですかね」と、ロック/ポップス黎明期ならではの心情を説明。
二弓が「よく一緒にいたし、一緒に飲んでたし、遊びも全部一緒だったから、ホントに気(心)が知れてる」と言うように、公私共に強い絆が今のライブにも反映されており、今年も名曲の数々を楽しく洗練されたパフォーマンスで送り出してくれるはずだ。
4月には筒美京平さんのトリビュートコンサートに出演するなどコンスタントにライブを行っている2人だが、新作リリースは10年途絶えている。しかし、共にソロアルバムを考えているという。
幸矢は「80(歳)ぐらいまでに出したいなって」と傘寿アルバムのプランを明かす。長く曲を書いていなかったという二弓も「最近、やっと曲を書き出したみたいな。少しは創作活動をしようかなって気持ちにはなっています」と打ち明け、「1枚ちゃんとした自分のアレ(アルバム)を作っておいた方がいいかなって」と話した。
幸矢は「現役でずっとステージもやってるから、(リリースとライブの)両方ともやっていくっていうことが、一つの使命感って言ったらオーバーか分かんないけど」と説明する。今年で合計150歳になる岩沢兄弟は、これからも日本のポップス史を作っていく。
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◆ブレッド&バター 兄の岩沢幸矢(いわさわ・さつや)は1943年7月11日生まれ、弟の岩沢二弓(いわさわ・ふゆみ)は49年2月23日生まれ、神奈川県茅ヶ崎市出身。69年、シングル「傷だらけの軽井沢」でデビュー。71~72年、故岸部シローさんとの「シローとブレッド&バター」で活動。心地よいボーカルとハーモニー、洗練されたサウンドが特徴で、主な楽曲に「マリエ」、「ピンク・シャドウ」、「あの頃のまま」、「特別な気持ちで」など。長年スティーヴィー・ワンダーと交友があり、松任谷由実らアーティストからの支持も厚い。