奥平大兼「無垢の感性」演技経験ゼロ 長澤まさみ主演映画で祖父母殺害する少年役

 映画「MOTHER マザー」で鮮烈デビューを果たした奥平大兼(撮影・棚橋慶太)
 親子を演じた奥平大兼と長澤まさみ(C)2020「MOTHER」製作委員会
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 実際に起きた17歳の少年による祖父母殺害事件に着想を得た女優・長澤まさみ主演の映画「MOTHER マザー」(公開中)で、期待の新人が鮮烈デビューを果たした。初のオーディションで大抜てきされた高校2年生の奥平大兼(16)。演技経験ゼロのまっさらな感性で、シングルマザーの母からゆがんだ愛情を注がれ、凶行に及ぶ少年を見事に体現している。令和のシンデレラボーイの素顔に迫った。

 初オーディションで映画「誰も知らない」(04年公開)の主演に選ばれ、当時14歳でカンヌ国際映画祭の主演男優賞を受賞した事務所の先輩・柳楽優弥(31)を思わせる存在感がスクリーンに焼き付いている。

 18年9月、祖父母を殺害する物語の最重要人物、周平役のオーディションが始まったが、適任者が見つからずに難航。同年11月、初オーディションで無欲の奥平が現れ、即日で周平役に決定した。佐藤順子プロデューサーは「映画は演技力より存在感。賭けてみようと思いました」。大バクチだった。

 当時を振り返り、奥平は「事務所からも『最初なので勉強だと思ってください』と言われていたので、びっくり。ガチガチでずっと心臓がバクバクしていて、記憶もほとんどないです」と苦笑いする。

 中1の冬、渋谷で友達とはぐれ、駅の改札付近をうろうろしていたところをスカウトされた。周囲の勧めで事務所に所属したが、中学時代はバスケ部の活動に注力。部活引退後の中3の9月からレッスンを受け始め、わずか2カ月後に運命の役と巡り会った。

 約1カ月間のワークショップを経て、撮影に入ったが「不安だけが募って『できるのかな、できるのかな』ってことばかり考えてました」と本音を吐露する。大森立嗣監督からのアドバイスは「自分が感じたことを大事にしてほしい」-。「本当にそのようにだけしていました」と無垢(むく)な演技で大役と対峙(たいじ)した。

 小学生時代に全国武道空手道交流大会「形」で優勝した経験を持つ一方、趣味はピアノでショパンを愛するクラシック好き。幅広い感性が、生来の演技派の血肉となっている。

 「自分が他の役をやったらどうなるんだろうっていう興味がすごくあります。いろんな役でいろんな人生を過ごしてみたいです」。柳楽の衝撃から16年。令和の底知れぬ原石から目が離せない。

 ◆奥平大兼(おくだいら・だいけん)2003年9月20日生まれ。東京都出身。6~12歳までやっていた空手は初段。全国武道空手道交流大会「形」で12年優勝、13年3位、14年準優勝。チームスポーツを経験したいと中学3年間はバスケ部に所属。音楽好きでピアノを得意とし、クラシックや洋楽を愛する。

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