タル・ウィルケンフェルド（３２）は２００７年、大物ギタリストのジェフ・ベック（７５）のツアーにベーシストとして抜てきされ一躍、脚光を浴びた。０９年２月にはＪ・ベックのツアーで初来日し、日本でも人気を博している。多くの大物に重用されてきたが今年、約１２年ぶりのニューアルバム「ラヴ・リメインズ」を、なんとシンガー・ソングライター（ＳＳＷ）として発表。新境地を切り開いて来日した彼女が、これまで共演した大物の素顔を語った。

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　０２年、１６歳で豪州から渡米したウィルケンフェルドは「ＳＳＷとして（キャリアを）始めたけど、渡米した時にベースにスイッチして、その魅力にすっかりとりつかれて」ベーシストに転身。０６年にオールマン・ブラザーズ・バンドのレコーディングに参加し、その後もＪ・ベック、ミック・ジャガー、プリンス、ハービー・ハンコック、チック・コリアら、ジャンルを横断して超大物からのコールが相次いだ。

　彼女の目に彼らはどのように映ったのか、印象を聞いてみた。

　「Ｊ・ベックはとてもシャイな人で、すごく優しい。彼にはとても感謝しています。彼のバンドに引き入れてくれて、公演中、しなくてもいいのに私にスポットライトを当ててくれたり、ソロのパートを入れてくれたり。つい最近もメールをくれて『君はロックスターじゃないか！』って言ってくれました。『あなたのせいよ』と返しておきました」

　「ハービーとの共演はたいへんスリリングでした。とても自由で縛りがないので、非常に開放的な気持ちでプレイできます。Ｊ・ベックも同じで、すごく働きやすかったし、演奏している時に自分自身でいられる」

　仕事をしたことはないが、１６年に急逝したレナード・コーエンは親しい友人だった。

　「レナードは常に考えていて、常に何かを探していて、その探求する魂にひかれました。彼は誰にでも優しかった。見たことがないくらいとても優しく、私が最も影響を受けた人です。忍耐力があって慈愛に満ちていて、とても思いやりがあって。ロックスターの印象とは真逆の人間でした」

　ミックとＺＺトップのビリー・ギボンズには、ＳＳＷとして歌詞を書く上でも「とても影響を受けました」という。「２人と曲を書いたことがありますが、とてもスピードが速くて、とてもクレバーです」と、彼らとの仕事を振り返った。

　二世代も三世代も上の超大物たちと仕事をする上で、緊張や恐れを感じることはないのだろうか。

　ウィルケンフェルドは「全然」と一笑に付し、「恐怖というのは、何かを創造する上で邪魔になります。私には失うものは何もありません。聴き手が聴いてくれなくても、こちらとしてはできることはないので。私の仕事は自分自身であることだと思っています。自分が自分自身でいられるとしたら、どうやってそれを怖いと思えばいいのでしょうか。恐怖の根源とは、自分をさらけ出すのが怖い、嫌われることが怖いということから来ると思いますが、私は一切、怖いと思っていません」と理由を説明する。

　ウィルケンフェルドは自分自身を「起きていることに対して、常に全力でちゃんと取り組んでいると思います。オンステージでもオフステージでも、常に起こり得るものに準備ができていると思うから、そのような姿勢でいるから、いろいろなアーティスト同士でひかれ合うのだと思います。そういう意味では恐れ知らずなのかもしれない。断言はできませんが、そういうふうに思います」と分析。

　「私は自分の幸せのために何かを頼っているわけでも、よりどころにしているわけでもない。演奏は自分にとってとても楽しいものですし、幸運にもとても得意なことなので、後は出たとこ勝負だと思います」と、自信をのぞかせていた。