田辺聖子さん死去 91歳 戦後代表する女性作家 「感傷旅行」で芥川賞

 芥川賞受賞作「感傷旅行(センチメンタル・ジャーニイ)」や「ひねくれ一茶」をはじめ、人生や男女関係の機微を軽妙な筆致でつづったユーモア小説などで知られる作家で、文化勲章受章者の田辺聖子(たなべ・せいこ)さんが6日午後1時28分、胆管炎のため神戸市内の病院で死去していたことが9日、分かった。91歳。大阪市出身。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は弟聡(あきら)氏。後日、東京と大阪でお別れの会を開く予定。

 戦後日本を代表する女性作家が逝った。

 大阪・福島で写真館を営む家に生まれた。樟蔭女子専門学校(現大阪樟蔭女子大学)卒業後、大阪の金物問屋に就職し、7年間のOL生活の傍ら小説を同人誌に発表。退職後、1955年に大阪文学学校へ。57年に「花狩」が「婦人生活」の懸賞小説で佳作となり、本格的な創作活動に入った。64年に「感傷旅行」で芥川賞。

 「私的生活」などで、男女の哀歓や独身中年女性の恋愛と生活を描写。大阪弁を駆使した明るい文体と人間への優しいまなざしで、庶民の生活感情をユーモアたっぷりにすくい取った。

 38歳で神戸市兵庫区の開業医、川野純夫さん(故人)と結婚し、川野さんが先妻ともうけた4児の母になった。雑誌連載した「女の長風呂」や、川野さんが登場する「カモカのおっちゃん」にまつわるエッセーでは、人生の妙味を朗らかに語った。

 古典文学への造詣も深く、「花衣ぬぐやまつわる……」(女流文学賞)、「ひねくれ一茶」(吉川英治文学賞)などの評伝や自在な現代語訳を試みた「新源氏物語」の他、古典案内も手掛けた。

 川柳作家岸本水府の評伝「道頓堀の雨に別れて以来なり」で泉鏡花文学賞と読売文学賞。「姥ざかり花の旅笠」で蓮如賞を受けた。ドラマ、映画など映像化された作品も多い。

 熱烈な宝塚歌劇ファンで、「隼別王子の叛乱」、「新源氏物語」などが舞台化された。創立90周年の04年には、宝塚大劇場で開催された記念式典で、田辺さん作詞の祝歌「百年への道 虹のカレンダー」が生徒410人で大合唱された。

 また、ツチノコ探しに執念を燃やす男性が登場する「すべってころんで」は、70年代のツチノコブームに火を付けたとされる。

 87年、直木賞初の女性選考委員に就任。94年に菊池寛賞、95年に紫綬褒章、00年に文化功労者、08年に文化勲章。07年には母校に田辺聖子文学館が開館。

 12年7月、在住する兵庫県伊丹市の新図書館「ことば蔵」開館記念式典では車いすながら鏡開きを務め、笑顔を見せていた。

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