映画「羅生門」や「雨月物語」に出演し、国際的スターとして活躍した女優の京マチ子（きょう・まちこ、本名矢野元子＝やの・もとこ）さんが１２日午後０時１８分、心不全のため東京都内の病院で死去した。９５歳。大阪市出身。１４日、親交のあったテレビプロデューサーの石井ふく子氏（９２）ら友人が立ち会い、密葬が執り行われた。石井氏によると、京さんが自ら手配したハワイの墓に眠るという。

　出演映画が海外の映画祭で次々と賞を獲得した「グランプリ女優」が、数々の功績を残して旅立った。

　京さんはかねてから療養中だった。

　奔放なエロチシズムやダイナミックな演技で新しい女性像を体現し、戦後の日本映画界をけん引した大女優だった。１３歳で大阪松竹少女歌劇団に入り、大きな瞳とグラマラスな容姿でスターダンサーとなった。１９４９年に大映に入社し、映画「最後に笑う男」に出演。「痴人の愛」の大胆演技で、肉体派女優として注目を浴び、看板女優になった。

　ベネチア国際映画祭で日本初のグランプリに輝いた黒沢明監督の「羅生門」には眉をそり落として臨み、武士の夫の目の前で三船敏郎さん演じる山賊に乱暴される女性の役を演じた。

　溝口健二監督の「雨月物語」では男を誘い込む亡霊の女を演じ、妖艶な魅力を放った。美しい武将の妻を演じた衣笠貞之助監督「地獄門」もカンヌ国際映画祭で最高賞に輝くなど、出演作が相次いで国際的に高く評価された。容姿端麗、あでやかさも兼ね備えた演技で人気を集めた。

　ドラマはテレビ朝日系「必殺仕舞人」（８１年）など必殺シリーズ、ＮＨＫ大河ドラマ「元禄繚乱」（９９年）など。８０歳を過ぎても精力的に活動し、最後の舞台出演は０６年「女たちの忠臣蔵」だった。

　抜群のプロポーションを維持。独身を通し、私生活の話題はほとんど伝わらなかった。

　密葬に参列した石井氏によると、京さんは元気だった頃に大好きなハワイへ赴き、墓を自ら手配していたという。

　銀幕の世界などで、あでやかに輝いた昭和の名女優の演技は、新時代・令和以降も語り継がれていく。