山本富士子 巨匠・小津安二郎の秘話を明かす 「ミルクの時間」とは…

 昭和の大スター、女優の山本富士子(85)が、21日放送のテレビ朝日系「徹子の部屋」で、日本映画が誇る世界的な巨匠、小津安二郎監督(1903~1963)の秘話を明かした。

 映画「彼岸花」(1958年)で唯一の小津作品出演を果たした。当時、映画会社は厳しい専属制度を敷き、大映の看板スター・山本が松竹の小津監督の作品に出演することは極めて難しかった。

 「私は何とか自分の新しい可能性を見つけたいという思いが強くありまして、長い間かかって会社(大映)にお願いをして、やっと実現したのが初めての松竹での他社出演。小津安二郎監督の『彼岸花』だったんです。本当に念願がかなって感激をしたのを覚えています」と経緯を説明。

 大映では「もうホントに超過酷なスケジュールで、徹夜は当たり前、夜間撮影は当たり前という状態」だったが、松竹では事情が違った。

 「夕方5時になると小津先生がスタジオから出て来られて、とってもうれしそうな顔で『これからはミルクの時間だよ』とおっしゃるんですね。私はホントにミルクをお飲みになるんだと思ってましたら、スタッフの方が『ミルクはお酒のことです』って。そう言って教えてくださったんですけども。そのありがたいミルクのおかげで、この『彼岸花』の時は徹夜も夜間も一切なし。夕方5時に撮影が終わるという」と、秘話を披露した。

 さらに、「先生ね、最後に終わりました時に、お別れ会をしてくださったんです。それは原作者の里見弴先生の鎌倉のお宅だったんですけど。先生はお酒がお好きでしょう?だからもう、すごいほろ酔い機嫌の上機嫌で、白いシーツを持ち出してきて、頭にかぶって、そして体に巻き付けて『カチューシャの唄』を歌って、踊ってくださったの。もう最高に楽しく感激したんですけど」と、巨匠のおちゃめな姿を回想。

 当時、山本は酒を一切飲めないことで通していたため、「今でも小津先生とお酒を酌み交わせなかったことがとっても残念でね」と悔やんだ。

 スタジオでは「彼岸花」のファーストシーンで着用した着物を「大切な宝物を持ってきた」と広げ、「撮影が全部終了した後で(小津監督が)記念にと私にくださったんです。この時は全部、(衣装担当でなく)小津先生が選んでくださったんですね。小津先生は赤という色がお好きでね。朱赤の裏地がついているんです」と、懐かしそうに説明した。

 山本は「いやあもう、小津先生はホントにステキな方でした。私は他社ですから、たった1本しかご縁がなかったんですけど。でも今、色んなところで『彼岸花』を上映してくださって、先生のお話をする機会がありますのでね。ホントに素晴らしいご縁をいただいたと思って感謝しています」と感慨深げ。

 小津監督の没後、山本のもとには小津監督の義妹、義妹の没後はその娘から、毎秋、小津宅に咲く彼岸花が送られてくるといい「かえって亡くなられてから色んなご縁が広がっていくっていうか。ホントにうれしいこと」と、映画が結んだ縁を喜んでいた。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

芸能最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス