男子ゴルフの田村尚之（５７）＝ダイクレ＝がシニアツアーの賞金王争いに名乗りを挙げた。８月下旬に開催されたファンケルクラシックを制し、５年ぶりとなるツアー２勝目をマーク。賞金ランク２位に浮上した。試合がない時は会社員でもある“二刀流プロ”は、自身初の賞金王とともに、初のメジャータイトル獲得、２度目の海外メジャー参戦なども視野に入れ、賞金レースが本格化する秋の戦いを迎える。

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　待ちに待ったツアー２勝目だった。８月２０～２２日まで静岡・裾野ＣＣで開催されたファンケルクラシック。田村は通算１０アンダーで並んだ３選手によるプレーオフを１ホール目で制した。グリーン奥のカラーから打ったイーグルパットがカップに吸い込まれると、何度もジャンプして喜びを爆発させた。

　「今季はずっと調子が良くなかったから、優勝できて本当にうれしかった」。一昨年の前回大会はプレーオフで敗退しており、その雪辱も果たした。今年２月に母・幸子さんが９０歳で他界。「今も空の上から見守ってくれているように感じる」。ファンケルクラシックでもピンチの時には空を見上げて力をもらった。母に捧げる優勝でもあった。

　１６年の富士フイルムシニアの初優勝から５年。なかなか２勝目に届かなかった。ここ数年、特に苦しんできたのがパッティング。右目の乱視に悩まされており、矯正レンズ入りのサングラスを着用しているが、「グリーン上で傾斜が全然読めない。全部右サイドが高く見える。迷ったまま打つから打ち方までおかしくなった」。ファンケルクラシックでは裾野ＣＣの元ハウスキャディーだった女性に臨時でキャディー復帰を依頼。ラインの読みを全部任せたことが優勝につながった。

　優勝賞金１５００万円を獲得。翌週に行われたマルハンカップ太平洋クラブシニア（静岡・太平洋クラブ御殿場コース）でも１１位に入った。今季の獲得賞金は１７３５万５３３９円となり、賞金ランクは２位に浮上（７日現在）。まだ９試合残っているものの、トップのウィラチャン（タイ）に約２０万円差に迫り、賞金王争いに名乗りを上げた。

　パーオン率は４位に位置するなどショットは安定しており、「これからの課題は体のケアとパッティング。特にパッティングは、しっかりとラインを読んでくれるキャディーをどうやって連れてくるかに懸かっている。傾斜さえちゃんと読んでくれる人だったらアマチュアプレーヤーの人でもいいんです」

　射程圏にある賞金王とともに狙うのが、まだ縁がないメジャータイトル。９月中旬に日本シニアオープン、１０月には日本プロシニアが控えている。いずれも優勝賞金は高額（日本シニアオープン１６００万円、日本プロシニア１０００万円）だけに、賞金王を目指すためにも手にしておきたいタイトルだ。

　「毎年、夏の終わりから秋にかけてどんどん体調が良くなっていく。優勝したことで来年のシード権を心配する必要もなくなった。残り試合は上だけを見ていい結果を残せるように頑張りたい」

　コロナ禍で流動的な部分もあるが、賞金ランク４位以内に入れば来季の海外メジャー出場権を得られることもモチべーションになっている。１７年には全米プロシニアに出場し、予選も通過した。「海外メジャーはゴルフで成功した人の集まり。できればもう一度出てみたい。年齢的にも最後のチャンスだと思うので、最低でも賞金ランク４位には入りたい」。次戦は９日開幕のコマツオープン（石川・小松ＣＣ）。より集中力を高めて、し烈な戦いが待ち受ける秋の陣に挑む。

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　【プロゴルファーと会社員の二刀流】　日本を代表するトップアマだった田村は４９歳の時にプロテストを受験して一発合格。今季がシニアツアー参戦８年目となるが、現在も呉市の鉄鋼商社「河商」に勤務する。肩書は取締役統括部長。試合がない時は作業着姿で仕事をしている。

　「会社に来たお客さんが私を見て『まだ会社にいるのか』と驚く人も多い。家にいてもゴルフのことばかり考えてしまうので、会社で仕事をしている方が逆にゴルフのことを忘れられる。いい切り替えになっている」

　最低でも６０歳まではツアーの第一線で活躍したいと思っている。現在５７歳。会社員とプロゴルファーとの“二刀流”も今後も続けていくつもりだ。

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　◆田村尚之（たむら・なおゆき）１９６４年６月２４日生まれ。廿日市市出身。５歳からゴルフを始め、修道中時代は関西ジュニアで優勝。東京理科大卒業後、マツダに勤務しながら本格的にゴルフ競技の道へ。現在は親族が経営する鉄鋼商社の河商に勤務。日本アマには２３年連続で出場。アマ時代の主な成績は日本ミッドアマ優勝３度、日本オープンベストアマ、日本アマ２位など。親交のある倉本昌弘（日本プロゴルフ協会会長）の勧めでプロ転向を決意し、１３年のプロテストに合格。シニア通算２勝。身長１７２センチ、体重６５キロ。家族は妻と２子。長女は中国放送の田村友里アナウンサー。