松山英樹 悲願のマスターズ制覇 日本人男子初!10度目挑戦で新たな歴史刻んだ
「米男子ゴルフ・マスターズ・最終日」(11日、オーガスタ・ナショナルGC=パー72)
松山英樹(29)=LEXUS=が日本人男子として初めてメジャーを制覇した。4打差首位からスタートし、73と落としたが通算10アンダー、1打差で逃げ切った。3年8カ月ぶりの米ツアー6勝目。優勝賞金207万ドル(2億2563万円)を獲得した。日本人がメジャーに参戦してから89年目、マスターズ初挑戦から85年目。アジア人としても初めてグリーンジャケットに袖を通した松山は、日本ゴルフ界の歴史の扉を開けた。
世界中のゴルファーが憧れるグリーンジャケットに、日本人がついに袖を通した。緊張で朝から体が動かなかったという松山が、苦しみながらも1打差で逃げ切り、10回目の挑戦でマスターズを制した。1936年に陳清水と戸田藤一郎が初挑戦して以来、ジャンボ尾崎や青木功、中嶋常幸、片山晋呉、石川遼ら各時代の日本のエースたちが阻まれてきたオーガスタの壁を、とうとう乗り越えた。
前日65を出したショットの切れはなかった。1番で第1打を右林に押し出してボギーで開始。前半は身長188センチのザラトリスの長い影がひたひたと忍び寄り、後半は集中力を増したシャウフェレが追いすがってきた。
勝負のあやは、15番と16番にやってきた。15番パー5、残り227ヤードの第2打で、松山は4番アイアンを握り2オンを狙った。その時点でシャウフェレと4打差あり、安全に刻む選択肢もあった。
だが、相手が3連続バーディーできていたため、流れを引き戻すためにあえて強行、そして打球は飛びすぎて奥の池まで転がった。シャウフェレは4連続を決めたため、これで2打差に。だが、松山の積極姿勢に勝負を焦ったシャウフェレは、先に打った16番の第1打、バーディーを狙ったショットを池へ落としてトリプルボギー。反撃の火は消えた。
勝負がほぼ決まった18番グリーン横では、2014年に米ツアー初優勝を争ったケビン・ナ(米国)や日本でも死闘を展開したジョーダン・スピース(米国)らが祝福のため待ち構えた。西日に照らされる中での表彰式で、松山は夢にまで見たグリーンジャケットを昨年優勝のダスティン・ジョンソン(米国)に着せられ、何度も両手を突き上げた。
2011年大会で、当時東北福祉大2年だった松山は、おどおどしながら初めてオーガスタにやって来た。東日本大震災の直後とあって「ゴルフをやっている場合なのか」と辞退も考えたが、「頑張る姿を見せて」という声に押されて出場、攻めるゴルフで日本人初のローアマを獲得した。
あれから10年。決して順風な競技人生だったわけではなかった。世界ランク2位で迎えた2017年の全米プロでは、最終日前半まで首位に立ちながら、後半3連続ボギーと崩れてジャスティン・トーマスに逆転された。それ以来、ツアー優勝から遠ざかっていた。
何かが足りない。何をどう修正すればいいのか……。誰よりも歯がゆい思いをしたのも松山自身だったのだろう。今年、新型コロナウイルスで外出が制限される中、今度は耐える力の強さを見せ、快挙を成し遂げた。
日本ゴルフ界の先人たちが次々とはね返され、日本人はメジャーで勝てないと言われた。だが松山は「それを覆すことができた。これから日本は変わっていく」という。新しい時代が幕を開けた。