女子ゴルフの２０２０年ツアーは、原英莉花（２１）＝日本通運＝のメジャー大会２連勝で幕を閉じた。新型コロナウイルスの影響で３月第１週に予定されていた開幕戦から１６試合連続で中止となり、６月末に第１戦が開催された後も７試合が中止に。日本女子プロゴルフ協会（ＪＬＰＧＡ）は２０年と２１年を統合して１シーズンとすることに決めた。異例の形となったシーズンの“前半戦”をデイリースポーツ評論家・岡本綾子氏（６９）が総括する。

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　コロナ禍で異例のシーズンとなりましたが、選手らは最後までよく見応えのある戦いを展開してくれました。シーズンは来年まで続きますが、取りあえずは無事に終えた２０２０年ツアーを振り返ってみたいと思います。

　賞金女王争いはまだ三分の一を終えたところ。とはいえ、賞金ランキングの４位までを２２歳以下、プロ３年目までの選手が占めるというのは、そうそうありません。今年は実に若手の台頭が顕著なシーズンとなりました。

　年内最終戦を完全優勝で締めたのが２１歳、いわゆる“黄金世代”の原さん。今年は１４試合しか開催されなかった中で２勝を挙げ、それもメジャー３大会のうちの２つを取ったんですから、「すごい！！」としか言いようがありません。

　メジャーになると何気に顔を出す、という選手がいます。逆に何十勝もしているのにメジャーになると勝てない、という選手もいます。私も「（海外）メジャーを勝ってないくせに」などと言われて悔しい思いをしたものです。それぐらい、メジャーの１勝は大きな意味を持ちます。

　原さんは尾崎将司さんを師匠に持ち、どこに行っても“ジャンボ門下生”という看板がついて回ります。その看板を背負っていることが、彼女にとってはいいモチベーションになっているんじゃないかな。人から見られているという意識が集中力を高めてくれる。街を歩いていて「あっ、原さんだ」となれば自然と背筋が伸びる。これがトップ選手の歩む道。メジャー２勝を飛躍の種に、来年もさらなる活躍を見せてくれることでしょう。

　原さんに負けず劣らず素晴らしい１年となったのが２０歳、“ミレニアム世代”の古江さん。一つ一つのプレーに無駄がありません。これは言葉を替えれば「ゴルフがうまい」ということ。ランキング１位の平均ストローク、パーセーブ率、リカバリー率といった数字がそれを物語っています。

　最終戦ではツアー記録に並ぶ１大会４イーグルをマークし、シーズン通算６イーグルもランキング１位タイ。決して飛ぶ方ではない古江さんが、というところに価値があります。プロ全員が「自分も」と期待を抱いたことでしょう。これからプロを目指す女の子にも大いに参考にしてもらいたい選手です。

　そして、賞金ランキングのトップに立つのが１９歳の笹生さん。“新世紀世代”と呼ばれているようですが、プレーぶりはまるでベテラン。ドライバーからアプローチ、パターまで１４本のクラブすべてにそつがありません。特にアイアンは自分の飛距離を打てているところがいいし、あの高弾道はなかなかまねできるものではありません。将来の楽しみな選手が出てきました。

　一方で昨年の賞金女王、鈴木さんは苦しいシーズンとなりました。ずっとトップで君臨してきて、若い選手ばかりにスポットライトが当たる時代が急に来たから、まるで自分がはじき出されてしまったような気がするのでしょう。でも、そんなことを気にする必要はありません。他の選手はみんな、鈴木さんの力を知っています。歌のタイトルではありませんが、時の流れに身をまかせ、自然体でいればいいんですよ。

　昨年に大ブレークした渋野さんも今年はずっと苦しんでいましたが、終盤に“らしさ”を見せてくれました。パットが入るようになり、ショットも歯切れが良くなりました。勘が戻ってきましたね。

　シーズン序盤はパットが悪い、悪いと言われていましたが、決してそうは思いません。アプローチを寄せ切れなかったり、難しいラインにつけてしまったり、と流れも悪かった。調子が悪いとすべてが悪い方に行くもの。そういう期間を数カ月で脱したのは、よく頑張ったと思います。約３カ月のブレーク期間を前に好成績を挙げられて、本人もホッとしていることでしょう。

　さて、来春の今季１５戦目はどのような形で開催されるでしょう。私の希望としては、ぜひギャラリーを入れて開催してもらいたい。若手が活躍した要因の一つに、無観客だったことも挙げられると思います。ギャラリーの前で、大声援のプレッシャーの中で勝ってこそ、本物の実力がついていくものですから。

　でも、こればかりはコロナ禍の状況次第で、私たちにはどうしようもありません。来年は無事に開幕戦を迎えられることを、心から願っています。