行司が力士に吹っ飛ばされ後頭部強打!救急車で救急搬送

 【2012年1月12日付デイリースポーツ紙面より】

 「大相撲初場所・4日目」(11日、両国国技館)

 大関把瑠都と小結若荒雄の一番でさばいていた行司が取組に巻き込まれた後、担架で運び出される異例の事態が起きた。三役格行司の木村庄三郎(61)=大島=が、把瑠都に送り倒された若荒雄の右腕に押し出されて土俵から転落。後頭部を強打し、しばらく動けなくなった。約5分後に運び出されるまで、土俵の進行がストップ。脳振とうを起こした庄三郎は幸い大事には至らなかったものの、検査のため都内の病院に搬送された。

 両国国技館が騒然となった。行司がピクリとも動かない。把瑠都‐若荒雄の一番の後、観客が立ち上がり心配そうに見守る中、近くの警備や観察の親方衆は木村庄三郎の帯を緩めた。約5分後に担架が到着し、運び出された。

 熱戦に巻き込まれた。体重175キロの若荒雄は、188キロの把瑠都に徹底した突き押しで対抗。まわしを取られまいと動き回り、最後は後ろ向きに送り倒された。

 行司は立ち位置を誤ってしまった。把瑠都と若荒雄と一直線上に並ぶ土俵際にいたため、はじき飛ばされた若荒雄の右腕にはじかれ、後ろ向きのまま吹っ飛ばされた。担架に運び出される際は目を開き、意識はあったもよう。把瑠都への軍配は、次の取組をさばくため土俵下に控えていた行司の木村玉光が上げた。

 館内の相撲診療所の宮坂敏幸医師によると、脳振とうを起こした。意識があり、異常はなかったものの、念のため都内の病院に搬送され、検査を受けた。

 把瑠都は行司を心配しながら「せっかくいい相撲を取ったのに。なぜそんなところに…。落ちた行司は、すぐ戻ってくると思ったが…」と浮かない表情。若荒雄は「腕が当たったのは分かった」と言葉少なだった。次の取組のため控えていた豊ノ島は「結構すごい勢いで落ちてきた。(土俵下の)軟らかいところにあたったと思う」と、その瞬間を振り返った。  思わぬ“余波”を受けたのが、新大関の稀勢の里だ。豊ノ島に今場所初黒星を喫し、館内はため息に包まれた。大関は「心配ですね。頭を打ったから。取組の影響?それはない」と話した。放駒理事長(元大関魁傑)は「影響がないといえばウソになるでしょう。緊張感はそう長く持続できるものではない」と、心中を察した。

 新大関誕生が注目される初場所。思わぬところでアクシデントが起きた。

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