JOC前会長・山下泰裕氏 故郷・熊本の地震に沈痛 培った精神力で逆境から前へ「私は肥後もっこすだから」【一問一答】

 熊本県で震度7を観測し、38人が死亡した地震から28日で1カ月となった。柔道の1984年ロサンゼルス五輪男子無差別級金メダリストで、頸髄(けいずい)損傷のため長期療養している日本オリンピック委員会(JOC)前会長の山下泰裕氏(69)が28日までに共同通信の取材に応じ、被害を受けた故郷について「つらい思いがある。なかなか言葉が出ない」と率直な心境を語った。

 以下、山下泰裕氏との一問一答。

  ◇  ◇

 -地震発生時の心境。

 「自宅でテレビを見ていて、どきっとした。10年前も大きな地震があり、熊本に帰った時はぐーっと胸が締め付けられるような気持ちになった。それがまた再びとは…」

 -故郷の景色で心に残るものは何か。

 「熊本城。私が通った藤園中学はお城の真下にあった。重厚な城は熊本県人の誇れるところだ。以前は帰ると熊本城の近くに泊まり、朝は周りを毎日散歩していた」

 -幼少期の思い出は。

 「生まれ育った山都町は山あいで、阿蘇の外輪山が思い浮かぶ。川で魚釣りをしたり、泳いだりもした。あの自然の中でおおらかに育ったことが、私の人生の基礎になっている」

 「肥後もっこすという言葉がある。頑固者という意味で、自分で例える時はポジティブなイメージがある。私は典型的な肥後もっこすかな」

 -夏の全国高校野球選手権大会では熊本代表の有明が8強入り。逆転勝ちで甲子園を沸かせた。

 「初出場で神がかり的。もう駄目じゃないかと思った試合もあったが、目に見えない力が出た。自分たちの頑張りが被災地の方々に届けと。その思いがボールに伝わった。有明の高校球児の姿は、苦しんでいる人たちに頑張ろうと感じさせるものがあった」

 -自身も逆境から前に進んでいる。

 「人間はいくつになっても成長できる。命尽きるまでが勉強だ。もう休みたいなと思った時は、幕を一つ引く時かもしれない。今は大きなプレッシャーもないし、重いものを背負っているわけでもない。あるがまま、自然体でいい」

 -不自由な状況で絶望的になることはあるか。

 「ない。自分に起きることは全部意味がある。無駄なことはない。今の状況を受け入れた中で、いかに自分らしく生きていくか。だから自分を不運だとは思わない」

 -困難に負けない精神力は何で培ったのか。

 「それは柔らの道で学んだ。逃げるのが嫌いなんだ。たとえ力尽きても、自分はこうやって生きてきたというこだわりがある。だって私は、肥後もっこすだから」

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