【遠藤引退】白鵬らが熱視線、鮮烈だった関取デビュー 師匠「あのケガがなかったら」
大相撲の人気力士、遠藤(35)=追手風=が引退を決意したことが27日、関係者の話で分かった。巧みな技術とセンスで土俵を沸かせ、端正な顔立ちからCMに起用されるなど相撲人気に貢献した。
日大でアマチュア横綱に輝き、13年春場所で幕下10枚目格付け出しで初土俵を踏んだ。関取となった同年名古屋場所は14勝1敗で新十両優勝を果たし、翌場所は史上最速となる所要3場所での新入幕を果たした。
その名古屋場所での支度部屋の様子は、今も鮮明に記憶に残っている。
当時の会場である愛知県体育館。広い支度部屋では十両の取組中、幕内力士は体を動かしたり、髪を整えるなど、それぞれが準備していた。
だが、遠藤の取組が近づくと、力士は動きを止め支度部屋のテレビを注視。白鵬、日馬富士の両横綱も床山に髪を結わえられながら、上目遣いでテレビの取組を見つめていた。ある取組後、腕組みをしながら豊ノ島が「うまい」とうなったのは、とても印象に残っている。それほど幕内力士に警戒される新十両力士だった。
入幕後の遠藤は、立ち合いの厳しい当たりに苦しんだように思い返されるが、高い技術で真っ向勝負を貫いた。平幕でも懸賞が多くかけられたため、闘志満々の相手に狙われる中、ほとんど幕内で関取の地位を12年守り続けた。
両膝など多くのケガに苦しんだ。今年の名古屋、秋場所は左右の膝を順に手術して休場。幕下陥落とともに、引退へと道を定めた格好だ。今後は名跡「北陣」を襲名して、後進の指導にあたるとみられる。
当初は取組前の四股の美しさも有名だった遠藤。師匠の追手風親方(元幕内大翔山)は今年の春、「あのケガがなかったら。一番いい時だったのに」と15年春場所、5日目の松鳳山戦で前十字靱帯断裂と半月板損傷を負った左膝の負傷を残念がった。そして「いつ引退してもおかしくない。本人もそんな気持ちでしょう」と続けていた。
最高位は小結。三賞6回、金星7つ。幕内成績480勝482敗73休。あの13年の名古屋で、幕内力士の多くが警戒心を隠さなかった姿からは、やや物足りないかもしれない。それでも限界まで戦い抜いたことは誰もが認めるだろう。



