桐生祥秀 8年ぶり大台突破で世陸参加標準突破 アキレス腱痛から復活「世界と勝負できること証明」 

 「陸上・富士北麓ワールドトライアル」(3日、富士北麓公園)

 男子100メートル予選2組(追い風1・5メートル)で、元日本記録保持者の桐生祥秀(29)=日本生命=が9秒99をマークした。桐生の9秒台は日本選手で初めて10秒の壁を突破した2017年の9秒98以来2度目。9月の世界選手権東京大会の参加標準記録(10秒00)も突破。日本陸連の選考条件の最上位を満たし、代表入りが確実となった。守祐陽(21)=大東大=も追い風1・3メートルの予選3組で10秒00を出し、参加標準記録を破って代表入りに前進。ともに棄権した決勝は雷雨のため中止となった。女子200メートル決勝(追い風1・0メートル)は井戸アビゲイル風果(24)=東邦銀行=が日本新記録の22秒79で制した。

 29歳になったスプリンターに『限界』の2文字はない。8年前の日本勢初の快挙から、桐生は何度も壁にぶつかった。重圧やけがに病気。それでも速くなれると信じて乗り越え、再び「10秒の壁」を突破した。「8年ぶりに出せてよかった。9秒台じゃないと世界と勝負できない。勝負できることを証明できた」。とびきりの笑顔で充実感に浸った。

 悩まされ続けたアキレス腱(けん)痛が昨秋に癒えたのが大きかったという。ジャンプ系のトレーニングを再開し「スタートで踏む動作がちゃんとできなかったが、力を使わなくてもうまく進めるようになった」と、この日も号砲から滑らかに加速した。

 中盤も力強い走りでライバルを突き放した。ゴール後は風の条件だけが心配だったというが、追い風は1・5メートル。公認記録になると確認し「調子が悪い時、速く走れない時もあったが、まだ勝負できるところを証明できた。ほっとした」と安堵(あんど)した。

 短距離界でも主流となった厚底スパイクに慣れるのにも時間がかかった。それでも「自分の感覚を裏切ってでも、武器を手にしないといけない」と走りをつくり直した。私生活から、スリッパも含めて底の厚い靴を約10足そろえて足を慣らし、今季は新たな走りに手応えを得た。

 五輪を含めた世界大会で、この種目の代表入りは2019年世界選手権以来となる。「まだ(参加)標準を突破しただけ。これからも変わらず自己ベストを狙っていきたい。9秒99を超えていきたい」。進化し続ける男は、さらなる記録更新に意欲十分だった。

 ◆桐生祥秀(きりゅう・よしひで)1995年12月15日、滋賀県彦根市出身。中学から陸上を始め、洛南高3年生時の織田記念陸上で10秒01を記録。東洋大に進学し、15年のテキサス・リレーで追い風参考ながら電気計時で9秒87をマークした。16年リオデジャネイロ五輪400メートルリレーで銀メダルを獲得。17年には日本勢初の9秒台となる9秒98の日本新記録(当時)を樹立した。21年東京五輪、24年パリ五輪代表。175センチ。

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