安青錦 最速金星!初土俵からわずか12場所で横綱豊昇龍撃破 戦禍のウクライナ出身力士初「体が動いてくれた」

 渡し込みで豊昇龍(左)を破った安青錦(撮影・坂部計介)
 支度部屋で記者の質問に答える(代表撮影)
 低い姿勢で豊昇龍の懐に入り込む安青錦
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 「大相撲名古屋場所・3日目」(15日、IGアリーナ)

 21歳の平幕安青錦が横綱豊昇龍を渡し込みで破り、自身初、ウクライナ出身力士初の金星を獲得した。初土俵から12場所目の金星は、年6場所制となった1958年以降、序ノ口デビューで最速。2勝1敗と白星を先行させた。豊昇龍は2日目の若元春に続き、昇進3場所で七つ目の金星配給となり1勝2敗。新横綱大の里は若元春を押し倒して3連勝とした。

 座布団が投げ込まれる中、安青錦が仁王立ちした。ぼうぜんとする豊昇龍を尻目に「信じられなかった」と感無量の表情。所要12場所のスピード新記録で金星を獲得した。戦禍を逃れて3年。大相撲の歴史にその名を刻んだ。

 豊昇龍の突き押しに負けず、左下手を取り、食らいつく。強引な上手投げにも崩れず、最後は左で太ももを抱えて渡し込みを決めた。「横綱に(技を)狙うとかはない。自分の力を出すだけ。体が動いてくれた」。前日の大の里戦の完敗から修正し、横綱大関戦を2勝1敗で終えた。

 大相撲入りから丸2年。現在の活躍を想像したか、と問われると「もちろんできなかった。幕内上位で取れるとも思わなかった。師匠の言うことを信じて良かった」と、安治川親方(元関脇安美錦)への感謝を述べた。

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、出国禁止となる18歳の誕生日を前にドイツに逃れた。友人で関大相撲部主将だった山中新大さんを頼り、2022年4月に来日した。

 入門後は安治川親方が集めた過去の名力士のインタビューや、特集映像を収めたDVDを鑑賞した。親方が「もう全部見終わった。新しいのがあればちょうだい」と話すほど没頭。夏場所で琴桜に敗れた際に風呂場で「クソッ!」と何度も叫んで激高するほど日本語が上達した。「皆さんに喜んでもらえる相撲、あの一番が良かった、と思われたい」と信念を掲げた。

 レスリング仕込みの低い体勢を維持する相撲は異彩を放つ。元大関旭国、元関脇琴錦、元関脇岩風らを参考にする相撲愛の深さも驚異的だ。戦禍に苦しむ母国。「自分の相撲を見た人が元気になったらうれしい」と思いを寄せた。

 ◆安青錦新大(あおにしき・あらた)本名ダニーロ・ヤブグシシン。2004年3月23日、ウクライナ・ヴィンニツャ州出身。7歳から相撲を始め、レスリングと並行。ロシアのウクライナ侵攻を受けて22年4月に来日し、関大相撲部で稽古を重ね、同年12月に安治川部屋に入門した。23年秋場所初土俵。24年九州場所新十両。25年春場所で所要9場所、歴代1位タイで新入幕を果たした。今年の春、夏場所とも11勝、2場所連続で敢闘賞。しこ名の下は来日を導いた関大相撲部主将・山中新大さん(現関大職員)から。182センチ、138キロ。

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