サニブラウン 優勝候補がまさか予選落ち 1週間前に右股関節負傷、強行出場も10秒45「アクシデントがあるのもスポーツ」

 男子100メートルで予選落ちしたサニブラウン・ハキーム(撮影・石井剣太郎)
 予選7組で4着に沈むサニブラウン(左)。手前は1着の桐生祥秀
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 「陸上・日本選手権」(4日、国立競技場)

 世界選手権東京大会代表選考会が開幕し、男子100メートル予選で大波乱が起きた。世界選手権2大会連続入賞を果たし、今大会の日本選手で唯一参加標準記録(10秒00)を突破しているサニブラウン・ハキーム(26)=東レ=が10秒45の7組4着で落選。参加標準記録を切って3位以内に入れば代表に決まる場で、アジア選手権2連覇の柳田大輝(21)=東洋大=は不正スタートで失格した。夜に行われた準決勝で桐生祥秀(日本生命)らは5日の決勝へ進出したが、9秒95の日本記録を持つ山縣亮太(セイコー)は敗退した。

 予選敗退となり、サニブラウンは悔しそうに顔をしかめた。それでも、トラックを後にすると「痛みはあったけど、できるだけのことをやって挑んだ」とすがすがしい表情だった。約1週間前の6月26日の練習で右股関節上部の骨挫傷を負い、全治3週間。強行出場した日本のエースに後悔はなかった。

 ピストルが鳴り、一気に駆け出したが、スピードに乗り切れなかった。「もうやるしかないという気持ちで、自分はできるぞっていう思いでスタートラインに立った」というが、足を上げるだけで痛むほどの負傷。「最初の30メートルをいい形でビルドアップしていけていたら。着順に入れなかった理由」と冷静に分析するも、レース直後は「悔しい」と本音を吐露した。

 しかし「こういうアクシデントがあるのもスポーツの一部。精いっぱいやった」と笑みもこぼれた。大会前日から「アスリートとして、プロとして」と何度も口にしてきた。応援してくれるファン、支えてくれた人たちへ「パフォーマンスで頑張っている姿を見せられたので良かった」と口にし、どんな形でも、いちアスリートとして走りきることに意味があった。

 出場を決めたのは、昨夏のパリ五輪の悔しさも理由のひとつだった。「パリの五輪で決勝に残っていれば話は違ったけど、残念ながら決勝に残ることができなかった」と、サニブラウンを突き動かしたのは、準決勝で敗退した大舞台での雪辱。棄権という言葉は一切頭になかった。

 世界選手権の参加標準記録(10秒00)は、パリ五輪の9秒96でたたき出し、日本勢で唯一突破済み。3位以内に入れば即時内定をつかみ取れたが、今大会での代表入りはかなわなかった。それでも、決勝に残った選手が8月24日までに標準記録に届かず、世界ランキングでも出場資格を得られなければ代表入りできる可能性があり「まだチャンスはある」と懸命に前を向いた。

 「一日一日、無駄にできない日が増える。やるべきことをやって、最善のコンディションで挑めれば」。一度負けたくらいでは屈さないのが真の実力者。サニブラウンの視線は、既に世界舞台に向いている。

 ◆陸上の東京世界選手権への道(トラック&フィールド種目) 各種目最大3枠で内定条件は以下の4通り。①パリ五輪3位以内で日本選手権終了時点までに参加標準記録を満たした選手。②は①の該当者がいない種目においてパリ五輪8位以内の日本人最上位で、日本選手権終了時点までに参加標準記録を満たした選手③日本選手権3位以内で、大会終了までに参加標準記録を満たした選手(①②の該当選手がいる場合は上位2人)。④ワイルドカードにより参加資格を得た選手。また、ワールドアスレチックス(WA)の定める各種目の出場可能人数を満たさなかった場合、日本選手権8位以内で参加標準記録を満たした選手や世界ランキング、さらに条件を満たす選手がいない場合は開催国枠によるエントリーなどもある。参加標準記録有効期間は2024年8月1日~25年8月24日。

 ◆サニブラウン・ハキーム 1999年3月6日、福岡県出身。父はガーナ人のラティフさん、母は日本人の明子さん。東京・城西中と城西大付城西高を経て米フロリダ大に進学した。15年世界ユース選手権200メートルでは、世界記録保持者のウサイン・ボルト(ジャマイカ)の大会記録を更新して優勝。世界選手権は15年から5大会連続出場中で、17年大会200メートルでは史上最年少の18歳5カ月で決勝に進出した。19年全米大学選手権100メートルでは当時の日本記録の9秒97をマーク。東京五輪、パリ五輪代表。190センチ。

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