日体大相撲部同期が語る大の里の素顔 「人を喜ばせるため、誰かのために相撲を取っている」 海洋高相撲部・寺尾拓真コーチ

 日体大4年時、大学選手権での大の里(左)と寺尾拓真さん(提供写真)
 日体大4年時の全国体重別選手権で。大の里(中央)と寺尾拓真さん(右)=提供写真
 海洋高で行われた化粧まわし贈呈式での大の里(右)と寺尾拓真さん(提供写真)
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 第75代横綱昇進を確実にした大関大の里と関わったことで、人生が変わった人々がいる。その中で垣間見た大の里の素顔を紹介する。第1回は日体大相撲部の同期で、現在は新潟・海洋高相撲部コーチを務める寺尾拓真さん(24)に話を聞いた。

  ◇  ◇

 大の里が能生中、海洋高で6年間を過ごした新潟県糸魚川市。能生港近くに海洋高の田海哲也総監督がかつて経営し、現在は合宿所となっている「かにや旅館」がある。生徒と寝食を共にする寺尾さんはコーチ3年目を迎える。

 日体大4年の夏休み。大相撲入りが決まっていた大の里は糸魚川、故郷の石川・津幡、広島、滋賀で10泊以上、稽古も行う旅を敢行した。相撲部の先輩ら世話になった地を巡るものだった。

 広島出身の寺尾さんは、公立ながら全国大会で活躍する海洋高に関心を持ち「相撲部を見たい」と頼んだ。すると「かにや旅館に帰るから一緒に行こう」と快諾され、5泊した。そこで田海総監督からコーチに誘われ、「指導者を目指す上で経験になる」と地元の公務員から進路を変更した。

 同校の指導を「基礎を大切にする」と寺尾さん。そして「地域から米、野菜、魚の差し入れをいただきます。生徒は登下校時に『頑張れよ』と声をかけられる。周囲の支えが大きい」と話す。「大の里は昔から人を喜ばせるため、誰かのために相撲を取っている」のが強さの一因と考える。

 出会いは高2の春休み。日体大合宿に参加すると海洋高の部員がいた。広島・盈進高で実績は乏しかったが、強豪に憧れ、個人参加した寺尾さん。大部屋の宿泊に萎縮していると、大の里から「気さくに声をかけてもらって」親しくなった。

 大学1年からレギュラーで学生横綱に輝いた大の里。寺尾さんは「仕事を免除されていましたが、私たちが掃除をしていると、『申し訳ないね』と差し入れを持ってくるような男でした」と述懐する。「すごく研究熱心。質問すると『この形にすると相手は力を出すから、こう攻めてこの形につくるといいよ』と即答されて驚いた」という。

 大の里は大学2年時は相手に研究され無冠。一時は思い悩む様子を見せたが、自ら学外のトレーナーを探して肉体強化に没頭。食事面を見直し、3、4年でアマ横綱を戴冠した。寺尾さんは「偉そうにしたり、威張ることはなかった」と振り返り、自身も触発され4年時、全国学生相撲個人体重別選手権75キロ未満級で優勝を果たした。

 横綱昇進を確実にした大の里に「疲れた時、気軽に能生に帰ってほしい」と思いやる。そして「生徒は先輩の活躍に勇気をもらっている。私はコーチとして、海洋高の活躍で大の里に勇気を与えたい」と誓っていた。

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