「有効」復活の柔道新ルールは“技での決着”促進 背景に延長戦頻発&指導狙い「より面白く、わかりやすく」寝技で懸念事項も
国際柔道連盟(IJF)が新たなルールを発表したことを受け、全日本柔道連盟(全柔連)の大迫明伸審判委員長が24日、オンラインで取材に応じ、新ルールの要点や狙いを説明した。廃止されていた「有効」が8年ぶりに復活するほか、相手の袖口に指を入れる組み手や、立ち技の攻防で頭から突っ込むヘッドダイブなどの反則が緩和され、攻防の自由度が高まる。国内大会でも4月1日から新ルールを施行することを発表し、「より柔道が面白く、魅力的で、わかりやすくなるようにという(IJFの)狙いがある」と述べた。
ルール改正の背景には、パリ五輪が開催された昨年までの試合で、ゴールデンスコア方式の延長戦が頻発し、指導狙いの試合も増加していたことがあった。また、「技あり」の定義が以前の「有効」レベルから「一本」に近い技まで含まれていたため、適正な技の評価を行うために、再び「有効」を加えて技による決着を促す狙いがあるという。大迫委員長は「浅い技がポイント(有効)としてカウントされる。(4分間の)本戦の間に、ポイントで勝負を決することを目的に変更を行った」とIJFの意図を代弁した。
また、相手の下半身を持っての攻防は解禁されなかったものの、両脚の付け根から水平のラインであればつかむことができるようになる(前のルールでは反則)。いわゆる足取り解禁にはならなかったが、「タックルばかりで“レスリング柔道”といわれた時代があった。しっかり組み合うために最初は(脚を持ったら)反則負けにしたが、(浸透してきてから)緩和し、今回も緩和したが一部は(罰則事項が)残った」と経緯を語った。
さらに、寝技では抑え込みの定義として「講道館の技名称にある抑え込み技で、相手に覆いかぶさり圧力を掛け、制していることが必要である」と明文化された。パリ五輪女子57キロ級銅メダルの舟久保遥香(三井住友海上)の得意技である“舟久保固め”など、変型の固め技が認められるのかについては「実際に運用を見てみないとわからないが、IJFのサンプル映像では(従来通りの)浅い抑え込みもあった。今まで通り認めると思う」と見解を示し、また新ルールでは抑え込み5秒で「有効」ポイントが入る(従来は最短でも10秒で「技あり」)ことを受け、「反対したが、5秒案が採用された。ゴールデンスコアだと(勝負が)決まってしまうので、浅い抑え込みで決まって決まるんじゃないかと懸念している」と明かした。
新ルールは、2月のグランドスラム(GS)・パリ大会から運用が始まる。大迫委員長は「実際にどう運用するかは見てみないとわからない」と話し、日本代表への影響については「大きな影響が出そうという程度で、どの点が日本にとって有利か不利かはわからない」と慎重に見解を示した。





