照ノ富士 完全燃焼の引退「逆にやりすぎたかな」涙なし 今後は照ノ富士親方として後進を指導

 第73代横綱照ノ富士(33)=伊勢ケ浜=が17日、現役を引退した。日本相撲協会に承認され、両国国技館内で会見。大関から序二段まで転落しながら、不屈の闘志で綱を張り「本当に激しい相撲人生だった」と感慨に浸った。そして完全燃焼した安どの笑みも浮かべた。今後は「照ノ富士親方」として、伊勢ケ浜部屋で後進の指導にあたる。

 不屈の横綱が燃え尽きた。昇進の口上で用いた『不動心』通り、涙はなし。堂々と「14年間、本当に激しい相撲人生だった」と感慨に浸った。

 引退の決断は、初日の小結若隆景戦。肩すかしに屈し、1秒で手をついた。「あれだけあっさり前に落ちるのは…」と限界を感じ、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)に「もう一回負けたら引退したい」と伝えた。

 4日目に翔猿に金星を配給。潔く現役に終止符を打った。「この中途半端な気持ちと体で土俵に立つべきじゃない」。横綱の責任を口にした。

 両膝の大ケガ、糖尿病などに苦しみ、17年秋場所後に大関から転落。19年春場所に序二段で復帰した最初の取組を「相撲人生の中で、一番緊張した、そわそわした、わくわくした」と、思い出の一番として述懐した。

 そして横綱に昇進し、10回の優勝を達成。攻めを受けてから怪力でねじ伏せるものから、先手を取る相撲に改造。「相撲人生を2回楽しむ、いい機会になった」と、プラスに捉えた。伊勢ケ浜親方からは「横綱に昇進したことは奇跡に近い。精神力は誰よりもある」とたたえられた。

 昨年名古屋場所で目標の優勝10回を成し遂げた後、毎場所優勝争いが混沌(こんとん)とする状況を「力士たちが相撲に向き合う姿勢が、昔より良くなっているからこそ、誰が優勝してもおかしくない大相撲になってきているんじゃないか」と前向きに捉えていた。そして、この日語った「相手と戦うより、自分との向き合い方を一番に考えてきた。誰よりも努力して、自分にウソをつかず、自分に負けるなと、常に言い聞かせていた」という信念が、大相撲の景色を変えたのだろう。

 来場所は1993年春場所で米国出身の曙が昇進してから続く外国出身横綱の系譜が途絶え、1992年に北勝海が引退後に番付上4場所続いて以来の横綱空位の可能性があっても「今場所、2人の大関に綱とりがかかっているし、若い力も多く出てきている。これからのみんなの活躍が、楽しみでしょうがない」と期待した。

 激しすぎる相撲人生。やり残したことを問われると「もうちょっと…という気持ちはない。逆にやりすぎたかな」と回答。全ての力を出し尽くし、横綱の役目を終えた。

 ◇照ノ富士春雄(てるのふじ・はるお)本名・杉野森正山。1991年11月29日、モンゴル・ウランバートル出身。2009年3月に来日し、鳥取城北高に相撲留学。11年1月に間垣部屋に入門し、5月の技量審査場所で初土俵を踏んだ。13年3月限りで部屋が閉鎖し、伊勢ケ浜部屋に移籍。14年春場所で新入幕。15年夏場所で初優勝し、場所後に大関昇進。17年九州場所で関脇に陥落し、19年春場所で西序二段48枚目まで降下した。20年7月場所で再入幕し、21年春場所後に大関復帰。同年名古屋場所後、横綱に昇進した。優勝10回、殊勲賞、敢闘賞、技能賞各3回。得意は右四つ、寄り。21年8月に日本国籍を取得した。192センチ、176キロ。

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