フィギュアスケート男子で五輪２連覇を果たし、昨年７月にプロ転向した羽生結弦さん（２８）の初のツアー公演となる「Ｙｕｚｕｒｕ　Ｈａｎｙｕ　ＩＣＥ　ＳＴＯＲＹ　２ｎｄ　“ＲＥ＿ＰＲＡＹ”ＴＯＵＲ」が４日、さいたまスーパーアリーナで開幕した。自身の経験において大きな要素を占めるというゲームの世界観の中で物語は展開。椎名林檎の「鶏と蛇と豚」、ゲーム音楽の「破滅への使者」など３つの新プログラムに加え、「春よ来い」など人気のプログラムを演技した。

　自身初の単独ツアー初日。羽生さんが、満員となった１万４０００人の大観衆を魅了した。

　「１つの作品としてこのアイスストーリーを実行できた。本当に幸せだなと感じる」

　次元を超越した羽生結弦の物語が、そこにはあった。栄光に彩られたスケート人生と、その裏にあった葛藤、不安、怒り、絶望が、８ビットの画面など自身が大きな影響を受けたゲームの世界観で展開されていった。時には銀盤から飛び出し、せり上がりの舞台装置上での激しいダンスも披露し、観衆の度肝を抜いていった。

　「ラスボス」をイメージしたという人気ゲームの楽曲を使った新プログラム「破滅への使者」の前には競技者時代さながらの「６分間練習」も。冒頭の４回転サルコーなどのジャンプに加え、切れ味鋭い滑りで熱演した。

　「人生をやめなければ、明日は続いていく。そんなことを考えながらこの物語を紡いだ」と話した羽生さん。アンコールでは代表作「ＳＥＩＭＥＩ」も舞った。約２時間半の公演を全力で演じ切り、降り注ぐスタンディングオベーションを受けながら感極まった。希代の表現者は１つまたステージを上げ、銀盤の新章を紡ぎ始めた。