東レ 惜敗も、31歳で死去の藤井直伸さんに届けた執念「藤井さん降りてきた」10度マッチポイントしのぐ魂の粘り

 「バレーボール・Vリーグ、東レ1-3JT広島」(18日、沼津市総合体育館)

 東レは、所属する東京五輪男子代表セッターの藤井直伸さんが胃がんのため31歳の若さで10日に亡くなったことを発表後、初の公式戦に臨んだ。JT広島に1-3で敗れはしたが、第4セットは劣勢から追いつき、ジュースで相手のマッチポイントを計10度もしのぐ脅威の粘りで、白熱のプレーを展開。最後は36-38で力尽きたものの、藤井さんが残した魂をチームで体現し、満員となったホームゲームの会場が一体となった。

 勝利は届けられなかったが、執念のプレーで心を一つにした。序盤は19-25、20-25と2セット連続で落としたが、第3セットは25-21と取り返して反撃。第4セットも24-25とマッチポイントを握られてから追いつくと、神がかったプレーの連続でゾンビのように何度も息を吹き返し、35-34と逆にリードを奪う展開となった。しかし、あと一歩及ばず苦杯。それでも会場は一体となって盛り上がった。

 6ブロックを決めた高橋健太郎は「藤井さんがたぶん降りてきました。自分の力(を超えた)+αがあった。(藤井さんが)力を貸してくれた」と不思議そうに振り返り、「チーム全員、彼のことを考えると熱くなれる。一丸となれている」と明かした。

 主将の峯村雄大は試合後、会場を1周する際に涙を見せる場面もあった。コート上でのあいさつでは「いろんな想いを背負って戦った試合で、絶対勝ちたい気持ちもあったが…」と弔い星を届けられなかった悔しさをにじませつつ、「選手、スタッフみんなで熱い試合ができた。負けてしまったが、明日からも試合が続くので、最高の場面をとにかく楽しんで、その上で勝つことを意識したい」と力を込めた。

 藤井さんの死去発表後初の試合とあって、試合前は全員が藤井さんの背番号21のTシャツを着てアップ練習に臨み、プレー開始前には黙祷をささげ、袖には喪章を付けて哀悼の意を表した。

 篠田監督は「藤井の追悼試合ということで勝利したかったが、序盤はそれが硬さになり歯車が合わなかった。こういうプレッシャーの掛かる場面で勝てるチームにならないといけないという藤井のメッセージでは」と受け止めていた。また、藤井さんと名コンビネーションを誇った李博は「自分の中では感謝の気持ちが多すぎて言葉では表現できない。ありがとう以上の言葉がほしい。自分は藤井がいなかったら何者でもなかった」とあふれる思いを表現した。

 藤井さんはセッターとして14年に東レに入団。16-17年シーズンにはチームを8年ぶりの優勝に導いた。17年に日本代表に初招集。東京五輪代表にも選出されるなど、今後の活躍にも期待が集まっていた。22年2月に胃がんが発覚し「ステージ4」であることを公表。闘病生活の末、今月10日に帰らぬ人となり、所属する東レが12日に発表した。

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