長谷川穂積氏 東京五輪金・入江選手と戦ってみた「コツや方式、勝ち方わかってる」
ボクシング元世界3階級制覇王者、長谷川穂積氏(41)が、昨年の東京五輪ボクシング女子フェザー級金メダルの入江聖奈(22)=日体大=を訪ねた企画の第2回は、2人のマスボクシングが実現。2分間の“対決”では、入江が時折笑顔を見せながら速いジャブからの攻撃を組み立て、長谷川氏は真剣な表情で応戦。向かい合った2人の感想は-。
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入江聖奈(以下、入江)「圧がすごくて、笑ってないとプレッシャーにやられそうでした。試合だったら1ラウンドで倒されていたと思います」
長谷川穂積(以下、長谷川)「いやいや、ビックリが先に来ました。全然当たらないし、(プロとアマは)戦い方が違うから、ポンポン当てられる感じ。でも、左を捨てて右フックを何回か出したの、意外とわからないでしょう?」
入江「右フックのキレ、尋常じゃないです。(試合なら)100%もらってました」
長谷川「レベルが高すぎて、途中から男子のつもりでやってました。絶対的な距離感があるし、いろんなタイプの選手と対戦しているから(攻防が多彩で)攻撃パターンではまるものがあまりなかった。あと(出入りのうまさで)ボディーが遠い。なかなかもらわないでしょ?」
入江「あまり直撃はないです」
長谷川「ボディーにいくと先に当てられる。プロなら一発ボディーを効かせたらそれでいいけど(アマは)それ(ヒット)がポイントになるので」
入江「ファイタータイプではないので、どの距離で戦うかという距離感はずっと意識しています」
長谷川「五輪ではジャブもうまいし、ステップを使って自分のリズムを刻んで戦っていた。(昨年11月の)全日本選手権はどっしりと構えるスタイルへシフトチェンジしていた。運動音痴だと言うけどボクシングの才能があふれている。メダルを獲る人はすごいとほんまに思います」
入江「本当ですか」
-小学2年からのキャリアがある。
長谷川「環境もあるでしょうけど、才能でしょうね。極論を言うとボクシングってコツなんです。倒す倒さないは別として…いや倒すのもコツかな。そのコツや方式をより知ってる人間が上に行く。勝ち方がわかってるんでしょう。もうちょっとやりたかったなあ」
入江「もうスタミナ切れを起こしていました。向かい合っただけでオーラや圧がありました。プロとして倒すか倒されるかのギリギリのところで戦ってこられたことが、にじみ出ていたのかなって」
-今後はアジア選手権(入江の初戦は5日、ヨルダン)、全日本選手権(22日開幕、墨田区体育館)と最後の2大会に臨む。
入江「(女子で)アジア選手権の金はいないので(五輪に続き)史上初をいただけたら最高ですね。でも、アジアはレベルが高いのでそう簡単にいかない。全日本は勝ち以外考えたくない。最後だと意識しすぎず、いつもどおりやりたいです」
長谷川「あと2大会、ケガせず満足して終わってほしいです」
◆長谷川穂積(はせがわ・ほづみ)1980年12月16日、兵庫県西脇市出身。99年プロデビュー。2005年4月にWBC世界バンタム級王座を獲得し、10度防衛。10年11月に同フェザー級王座、16年9月に同スーパーバンタム級王座を獲得し、世界3階級を制覇。同年12月に王者のまま引退。通算41戦36勝(16KO)5敗。引退後は本紙評論「拳心論」やテレビ出演、神戸市内のジム「長谷川穂積フィットネス&ボクシング」運営など多方面で活躍する。1男1女の父。
◆入江聖奈(いりえ・せな)2000年10月9日、鳥取県米子市出身。漫画「がんばれ元気」を読んで小学2年の時に地元のシュガーナックルジムでボクシングを始める。米子西高3年で全日本選手権初優勝。日体大に進み、19年世界選手権8強。昨年の東京五輪に並木月海とともに日本女子初の五輪出場を果たし、金メダルを獲得した。同11月全日本選手権優勝。来春、東京農工大大学院に進学。右構えでスピードのある多彩な攻撃が武器。身長164センチ。




