【東京五輪 祭りのあと】バドミントン不発の裏に「強豪国」のジレンマ

 新型コロナウイルス禍で1年延期となった東京五輪が8日に閉幕した。大会中止を求める声が根強くある中で、世界各国・地域のアスリートたちが死力を尽くし、関係者がさまざまな思いを抱えながら支えた19日間。デイリースポーツの五輪取材班が「祭りのあと」と題し、大会全般の課題と収穫などを多角的に検証する。第3回は、目標達成に遠く及ばなかったバドミントン日本代表チームについて論じた。

  ◇  ◇

 東京五輪で日本選手団は空前のメダルラッシュとなった一方、競技によって明暗も分かれた。特にバドミントンは全5種目に金メダル候補を擁する史上最強メンバーで臨んだものの、混合ダブルス日本初の銅メダルがやっと。「金3個を含むメダル6個」の目標に遠く及ばず、熱狂の蚊帳の外に追いやられた。

 日本代表の朴柱奉監督は敗因について「延期の影響が大きい」と総括した。コロナで国際大会は次々中止。代表合宿も昨年9月まで実施できなかった。ただ、条件は他国も同じ。敗因をそれだけに求めるのは無理がある。

 最も大きな落とし穴は、強豪国へと上りつめた“パラダイムシフト”に日本自身が対応できなかったことではないか。ある関係者は大会前に「『メダルを獲りにいく種目』から『メダルを獲らなきゃいけない種目』になってしまった。でも、誰もそんな状況で戦う経験をしたことがない」と懸念していた。悪い予感は的中した。

 04年の朴監督就任以降、日本は右肩上がりで飛躍した。要因の一つは地獄の猛練習。スタミナと脚力を身につけるため合宿では吐くほど追い込んだ。筋肉痛のまま飛行機に乗り込むのもザラ。強豪国に一泡吹かせるためのイケイケの雰囲気が上昇気流となり、一つの到達点がリオ五輪の高橋礼華、松友美佐紀ペアの金メダルだった。

 今大会までは各種目で世界上位に食い込み、スポーツ庁が強化費を重点的に配分する格付けでは最高の「Sランク」で、柔道などと同様に金メダル種目として期待された。

 今大会直前はケガをしないことが優先。前回を知る関係者は「リオの方が追い込み方が厳しかった。ケガ防止のためかもしれないが、全体的にセーブしている。前はぶっ壊れるまでやるって気持ちだったが…」と証言する。また、指揮官自身、強豪国を率いた経験がなくジレンマを抱えていたのではと見る向きもある。

 経験値も不安要素で、冷静に考えれば、金候補を抱えながらも、13人のうち五輪経験者は遠藤大由、奥原希望、山口茜の3人のみ。しかもエース桃田賢斗が1次リーグで敗退するという衝撃的な結果が、悪い流れとして全体に波及していったことは想像に難くない。

 結果的に、世界が目の色を変えて戦う五輪で勝ち抜く準備が整ってなかった。3年後に向けては現メンバーの多くがスライドする可能性も高く、いかに維持、向上できるかが雪辱のカギだ。一方、中長期的視点では、代表メンバーが固定されているため若手が育っていないという指摘もある。日本協会は、発展途上期の強化法の行き詰まりという構造的問題を直視する時期にきているのではないか。(デイリースポーツ特別取材班)

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