“戦う医学生”朝比奈沙羅の世界選手権代表選出に疑問の声 選考会欠場「例がない」

 「柔道・全日本選抜体重別選手権」(3日、福岡国際センター)

 第1日は女子7階級が行われた。試合後には強化委員会が開かれ、6月の世界選手権(ブダペスト)の代表9人を選出。東京五輪代表は大会直前のため1人も入らなかったが、五輪代表補欠は7人全員が選ばれた。ただ、78キロ超級の朝比奈沙羅(24)=ビッグツリー=の選出については、委員から、今大会も含めた選考試合に出ていないことや、代表合宿への参加状況から疑問や不安の声も噴出した。

 朝比奈は18年世界選手権で金メダルを獲得しているが、東京五輪代表争いは素根輝(パーク24)に敗れて落選した。一方、昨年は念願だった医学部受験に合格し、同4月から独協医大に入学。現在も“戦う医学生”として勉強しながら、空いた時間に柔道の練習を行っている。

 ただ、久々の実戦となった昨年12月の全日本女子選手権では精彩を欠き、70キロ級の高校生相手に敗れて初戦で姿を消した。また、代表選考会を兼ねる今回の全日本選抜体重別選手権も、試合直前に肋骨(ろっこつ)を骨折したため欠場していた。

 報道陣にも公開されたこの日の強化委員会では、朝比奈の代表選出について注文がついた。ある委員は「女子の選考は、海外の実績プラス国内の成績を総合的に判断し、直近の成績から戦えるめどを判断してきたと思うが、朝比奈選手は出ていない。全日本選手権でも下の階級の選手に負けた。国際大会にも選考会にも出ずに代表を選んだ例はなかったのでは」と疑問を投げかけた。

 また別の委員は、朝比奈の“二刀流挑戦”を支持しながらも、日本代表としては最強の柔道選手を送り出す責務を強調。「朝比奈選手は合宿への不参加やケガが多い。大会への準備が不十分なら交代もあり得る。日本代表としては責任を持って選ばないといけないが、心配な材料がある」と、練習時間の確保やコンディションを不安視した。

 朝比奈の他にも、今回の選考会を欠場して代表に選ばれた選手はいるが、コロナ禍による中断明け以降、海外を含めた複数大会に出場して結果を残している。学業で柔道に専念できない状況の上に、直近のパフォーマンスで判断できないだけに難しい選考となった。

 委員からの指摘に対し、強化幹部はこのような選考の前例がないことを認めつつも、この1年はコロナ禍でイレギュラーな状況だったことを強調し、過去2年の成績を総合的に判断したと説明した。

 会見に臨んだ日本女子の増地克之監督(50)は「本来であれば最終選考会の今大会で朝比奈が戦う姿を見たかったのが正直な気持ち。(初戦敗退の)全日本しか見られていないので不安はあるが、彼女のポテンシャル、世界王者になった経験は代えがたいものがある。まずはケガを治して、コンディションを上げていくことを考えながら強化を図っていきたい」と語った。

 従来、世界選手権は五輪イヤーには開催されないが、今年は東京五輪が1年延期となったこともあって異例。さらに、五輪直前の6月開催が決定したのは21年の年明けだったため、全日本柔道連盟としても代表選考規定を入念に練ることができなかった。

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