琴奨菊「できるのなら、まだ相撲を取りたい」 男泣きで土俵に別れ…後進育成へ誓い

 「大相撲11月場所・8日目」(15日、両国国技館)

 大関を32場所務めた関取最年長の36歳、琴奨菊=佐渡ケ嶽=が引退記者会見に臨み、男泣きしながら19年の土俵人生に別れを告げた。日本相撲協会は十両琴奨菊の引退および年寄「秀ノ山」の襲名を発表。最後まで強さへの探究心を持った求道者は指導者として琴勝峰、琴ノ若ら若きホープをスターへと育て上げる。

 引退を決めても琴奨菊の魂は戦いを求めていた。「できるのなら、まだ相撲を取りたいのが本音」、「(がぶり寄りで勝つ相撲を)もう一度したかった」。19年、最後まで相撲の求道者だった。

 それでも先場所、負傷した左ふくらはぎは限界。「体が言うことを聞かず自分の終わりと思って決断した」とここが引き際だった。

 思い出の一番を問われた際、人柄がにじんだ。「幕下の時…。厳しく胸を出してくれた兄弟子…。師匠の思い、ライバルの存在が一番。苦労した時の方が思い出」と、右頬を大粒の涙がつたった。

 2人の“同期生”、稀勢の里(現荒磯親方)と豊ノ島(現井筒親方)と競い合い、番付を駆け上がった。「横綱(稀勢の里)と三番稽古(同じ相手と続けて取る)を誰よりもした」と誇る。「その時代に戦えたみんなの強さが身に染みて分かっている。自分は納得のいくまで取り切る」と、戦友の分も土俵に立ち続けた。

 今場所6日目、千代ノ皇戦の前、土俵上で上体を大きくそらす“琴バウアー”を解禁。「勝っても負けてもこの一番で終わろう」と惜別の思いを込めた。祐未夫人、3歳の長男・弘人君も国技館に呼び最後の勇姿を見せた。

 16年初場所で日本出身力士として10年ぶりの初優勝。幕内通算718勝は歴代6位。大関昇進伝達式で用いた口上「万里一空」。一つの目標に向け努力を続ける-。言葉通り相撲人生を全うした。

 今後は秀ノ山親方として後進を育成。「壁の先を知らずに苦しんでいる子もいる。自分の経験で、その先の光景を見せられるような指導をしたい」。琴ノ若、琴勝峰と若い弟弟子に対し「胸を出して引っ張り上げる」と誓った。

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