拠点ジムが九州豪雨被害、不屈のセオン「このジムから五輪へ。金獲る」

 東京五輪のボクシング男子ウエルター級代表の岡沢セオン(24)=鹿児島県体協=が7日、デイリースポーツの電話取材に応じ、拠点とする鹿児島県鹿屋市のジム「ワイルドビースポーツ」が豪雨被害を受けた状況を明かした。浸水は床上に及び、トレーニング機器や用具類のほとんどに影響したという。復旧作業を続けている岡沢は「逆境をモチベーションに変える」と心を奮い立たせた。

 想像もしなかった光景だった。慌てて駆けつけたジムには、グローブ、計量器、4台のランニングマシンなど、リング周りのほとんどの用具が泥にまみれて転がっていた。「まさか、こんな…。災害の怖さを甘く見ていました」。岡沢は声を絞り出した。

 前日6日の朝、激しい音をたてていた自宅の雨戸を開けて驚いた。マンション2階から見た自宅前の通路は「川になっていた」。ジムが低地にあることから「すぐに行こうとした。でも、水があふれて道に出られなかった。昼に水が引いてからジムに行った」と振り返った。

 目の当たりにした惨状。すぐに始めた復旧作業は7日も続き、「まだ2、3日はかかりそう」と言う。用具や器具だけでなく、「床も木の部分がはがれたりカビが生えたりするかもしれない」と被害は甚大で、復旧のメドは立たない。

 山形出身の岡沢にとって鹿屋は第二の故郷だ。中大時代は大きなタイトルとは無縁で、卒業後は就職してグローブをつるす予定だった。しかし、鹿児島県体協が指導員を探していると聞き、企業の内定を辞退して体一つで新天地に移った。

 「ここに来て自分は変わった。とても思い入れのある場所」。同ジムの荒竹俊也会長の指導でフィジカル面を徹底的に鍛え直し、2018年全日本選手権で初優勝。19年は、初の国際大会だったアジア選手権で銀メダル、五輪テスト大会も制し、今年の五輪予選を通過して、日本代表入り。まさにこの地で、メダルが期待される日本のエースに成長した。

 スパイスカレーなど料理が得意な岡沢に、いつも野菜を分けてくれる地元の人たちも被害を受けた。今月末には日本代表合宿が予定されており、「とにかく早く片付けて練習しないと」と焦りはある。それでも、当面は練習を中断して復旧作業に集中する意向だ。

 「このジムから五輪に出たい。少しでもいつもの状態に戻して、恩返しをしたい」と、クラウドファンディングの申請も進めている。「こうなったらコロナも災害も、逆境は全部モチベーションに変える。金メダルを獲ってかっこいい姿を見せたい」とセオン。心を奮い立たせて、傷ついた鹿屋から不屈の精神を見せる。

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