飛び込み・寺内健「41歳の生き様、初メダルの武器に」 6度目五輪へ決意

 自身6度目の五輪へと向かう飛び込み男子の寺内健(39)=ミキハウス=が8日、電話インタビューに応じた。東京五輪の1年延期が決まり、五輪期間中に41歳を迎えることとなったが、大ベテランはぶれずに過去5大会で得られなかったメダル獲得を目指している。飛び込みから入水までわずか2秒弱。寺内はこれまでのキャリアを誇りに、その一瞬に自身の「生き様」を込めて戦う。

 ◇  ◇

 -新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月24日、東京五輪の1年延期が決まった。

 「やはり2020年へ向けてやってきたことは確かなので、最初はネガティブな気持ちになったし、(五輪代表の)内定がどうだとかも考えた。でも何より人命は優先されるべき。まずは終息へ、外を歩かないこと、周囲に感染させないことを心がけることしか今はできない」

 -プール練習は。

 「3月半ばから一切できていない。3月19日までマレーシアで合宿をしており、帰国後の自宅待機要請は出ていなかったけれど、念のために2週間待機している中で緊急事態宣言が出たので。少しリラックスしながら自宅で体が動かせる範囲の体幹トレーニングを最低限やっている。ジャンプトレーニングも入れたいけれど、マンションなので…」

 -海外の選手とは。

 「イギリスやメキシコの選手とはグループで『大丈夫か』『練習できてるか』などのやりとりを少しした。スペインやイタリアの選手は本当に大変で、命を守らないといけない、気をつけてってメッセージをSNSで送っていた。練習よりも今大事なことがあると」

 -“おうち時間”はどう過ごしているか。

 「以前よりお金と時間を使って料理をするようになり、体重が2キロほど増えた。あとは去年から猫を飼っているので、猫と向き合う時間が増えている。名前は豆助。トレーニングしながら、猫に邪魔される時間とか、割と有意義に感じている。後輩の玉井陸斗(JSS宝塚)たちとオンラインでのサバゲーもやる。14歳に負けないよう、動画サイトでゲームのうまい人の動画を見て研究中(笑)」

 -北京五輪後の09年に一度引退し、サラリーマンを経験した。競技から離れた時間を知っているのは強み。

 「今まさに、この状況で何の焦りもなく、ネガティブな心境にならないのは、おそらく過去にそういう状況を経験しているから。しかも以前は競技に戻るなんて全く思わず、何もしていない状況からの現役復帰だった」

 -ブランクからの復帰。当時の心身の状態はどうだったか。

 「体は、復帰後3カ月ほどで出場した選考会でも抜群の動きができた。一方で試合勘は失われていて、当時はそこが不安だった。今は試合のことを考えたり、過去の試合を振り返ったり、競技を今までと違う観点から考え直せたり、有意義な時間を過ごせている」

 「体力面は、いずれしっかり体を動かせるようになればすぐ戻ると思う。いったんストップしてのリスタート。できないことを見る後ろ向きな考えではなく、練習が始まったらトレーニングを一からやり始めようと前向きに。一気に取り返そうではなく、時間を掛けて。来年に照準を合わせていくことが大切」

 -今この時間を過ごす中で、競技はどう見えているのか。

 「飛び込みと言うよりは、スポーツ選手としてのあり方、五輪のあり方、スポーツの価値について考えている。1カ月ほど前は五輪がどうなるかで世間の話題は持ちきりだったけれど、その中でコメント欄などを見ると、ネガティブな意見が多数だった。そんな場合じゃないとか、お金の使い方はどうなのかとか。あらためて五輪はみんなが目指すものではなく、選手が満足感や使命感のために目指しているだけで、あくまでも平時に行われるもの、スポーツ自体もそうだと感じた。自分たちが目指す来年の五輪が自己満足のために開催されるのではなく、否定的な思いを抱いた人たちも『やって良かった』『平和が戻ってきた』と思える五輪になってほしい」

 -東京五輪は21年夏に延期となり、大会中の8月7日には41歳の誕生日を迎える。五輪への思いに変化は。

 「自分も最初は40歳から41歳はまた苦しくなるのではないかと考えた。ただ、41を不安に思うなら、40の東京大会を目指していなかったと思う。引き続き挑戦の日々になる」

 「キャリア、生きざまは、絶対に大事な大会で最後の最後にパフォーマンスの奥に投影される。そういう思いで歩み、努力を重ねてきた。ただ、もっと深みを出すためには努力以外の面、気持ちの持ち方が試される。今は地球上のみんなが苦しいと思うが、来年日本代表として戦う中で、支え合い、その苦しさを乗り越えた先に光があるということをパフォーマンスで示したい。結果だけではなく、応援して良かったと思わせられるような、アスリートとしての戦いを見せたい」

 -今までとは違った1年になりそうか。

 「16年からの3年間をしっかり戦った上で、一度ストップはしたけど、そこからどう時間を使うかという1年になると思う。リオの時はまさか東京大会がこんな風になるなんて誰も想像しなかった。目の前にあることを一つずつ、1段ずつ階段を上っていくしかない。より高く長い階段を作って、上っていける1年にしたい」

 -今描く目標は。

 「やはりメダルに向かって取り組むしかない。それはずっと頭にあるし、根底にある。もう一つは、コロナが終息した証しの五輪になればいい。世界中が笑顔で、最高だったって思える五輪に、自分たちも貢献したい。コロナが終息した暁には、しっかり鍛錬し、より強くなりたい」

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