付け人への２度の暴力問題を起こした大相撲の十両貴ノ富士（２２）＝千賀ノ浦＝が１１日、ようやく引退勧告を受け入れ、日本相撲協会に引退を届け出た。同日付で協会は受理した。協会とスポーツ庁にＡ４用紙８枚の意見書も提出し、協会に対し「失望」と批判。師匠の千賀ノ浦親方（元小結隆三杉）の“パワハラ”を問題視するなど最後まで対立したが、訴訟への発展は回避された。退職金は養老金と合わせ推定１９０万円が支給される見込み。

　意見書に貴ノ富士の不満とあきらめの心境がにじんだ。

　「協会の将来に失望しました。仮に、今回の処分の不当性が公に認められたとしても、今の協会内、相撲部屋内に私が戻るところはない」。「協会とのやりとりに疲れ果てましたので引退を決意」

　暴行を繰り返し、下った厳罰が覆るわけがなかった。９月２６日に協会は自主引退を促す決議。同２７日に貴ノ富士は会見し、同決議を拒否する考えを示した。そこから部屋で謹慎もせず、都内マンションに滞在。連絡は代理人弁護士に任せ、師弟は音信不通。相撲界で師匠を無視するなどありえない行為だった。

　最悪の訴訟こそ回避したが最後まで対立姿勢。意見書では代理人が協会批判を最後とばかりに繰り広げた。近年の暴力、不祥事を次々と挙げ、付け人への教育制度、再発防止策の不備を主張。協会や千賀ノ浦親方の「なぜ弁護士を付けたのか」などの言動は“パワハラ”だと糾弾した。

　決議から１５日、協会は粘り強く貴ノ富士が受け入れるのを待った。「将来のことがあるから」と芝田山広報部長（元横綱大乃国）。退職金も規程通りに支給される見込みだ。

　幕内貴源治（千賀ノ浦）と双子力士として人気で将来有望だった２２歳。「相撲を愛する者として、相撲を続けたいという気持ちに変わりはありません」。自らの愚行により志半ばで角界を去った。