【東京へ駆ける・植草歩】美しく勝つ!新種目「空手」東京金で“1つ”の顔に

 2020年東京五輪の開幕まで、12日であと500日。日本発祥の競技であり、新種目として採用された空手で、初めての五輪に臨む組手の68キロ超級16年世界選手権女王で、18年銀メダルの植草歩(26)=JAL=がデイリースポーツのインタビューに応じた。昨秋の世界選手権敗戦のショックから、東京五輪での金メダル獲得へ向け立ち上がった胸中を吐露。「キラキラ輝く女性でいたい」と、強く美しく戦う女性アスリートとしての思いを語った。

  ◇  ◇

 -東京五輪まで500日になった。

 「早いなと。自分は6年前から準備をしていた人なので」

 -6年前…。

 「東京五輪が決まり、空手が入るかもしれないとなって意識をした。そこから考えると、もう500日。あっという間です」

 -6年前からここまで、金メダルと自分との距離感は。

 「どんどん近づいている感じはあります。6年前も自分なりに努力していたけど、当時はまだ日本一にも世界一にもなれていなかった。社会人になり、その後世界一になり、自分のやり方は間違っていなかったという自信につながって、成長できました」

 -五輪があったからこそ成長できたと。

 「んー。最初は、五輪を成功させるために頑張る人でいいと思っていたんです」

 -頑張る人とは。

 「自分は東京五輪のときは28歳。正直、2020年に活躍するのは後輩たちだと思っていて。でも周囲から、すごく脂がのっている時期だと言われ…。その後、空手が入るかもしれないという記者会見で、空手を続けるつもりじゃなかったにもかかわらず『金メダル取ります』と言ってしまった。やめられなくなったんです。でも、背中を押してもらった」

 -新種目の空手を象徴するような立ち位置の選手になった。

 「成績もないのに、自分のキャラクターが先走ってしまったときもあったけど、だからこそキャラクターで終わりたくない、テレビに出ているから植草は弱くなった、って思われたくないと思いました。注目や期待に応えようと思えるようになり、少しずつ強くなれました。そしてやっぱり、常にキラキラ輝く女性でいたいと思っていたので、容姿だけじゃなく、アスリートとしてもみんなから憧れられるような選手でありたいと思ってから、どんどん変わりました」

 -キラキラ輝く女性でいたい。植草選手は今年の目標にもその言葉を掲げている。

 「最初は、高校の恩師に言われたんです。『メディアに出るお前を見て、俺はお前がすごくキラキラした女性に見える。そういう女性であってほしい』と。髪を伸ばしたり、お化粧したり、一歩間違えばただのギャルみたいになってしまう。でもそれは違う。見た目だけじゃなくて内面も、誰からも『キラキラしている、格好いい』と言われる女性でいなさいと。お前はそうすべき人間だと言ってもらった。でかい子はパーカにデニムしか着られないとか、アスリートはジャージーばっかりだとか、そうじゃない。おしゃれはできる、かわいくできる、きれいに見える。子供の頃、おしゃれしたいから空手を辞めたいと思ったこともあったので。自分なら伝えられるんじゃないかと思う」

 -スポーツ界には女を捨てて頑張るような文化もあると思う。

 「トレーニングも空手の練習も頑張るし、極めるところは極める。でも、オフはアスリートである必要はないと思う。もちろん行動など気をつけるべきだけど、普段と違う自分でいることが自分にとっては息抜きになる。髪を巻いて、化粧をして、私服を着て、ちょっといつもと違う自分がいて…。おしゃれやショッピングは趣味。もちろんそれはゲームや旅行など、人それぞれ。オン、オフでリフレッシュができたら何でもいいと思うけど、自分は女性らしくいることが好きです」

 -美を保つための日課はあるか。

 「夜と朝と2回パックをします。パックしたまま歯を磨いたり、荷物の準備もできるのでラクですよ」

 -試合前に美容院に行くとも聞いた。

 「はい、トリートメントに」

 -サラサラロングですもんね。

 「高校、大学とショートだったので、伸ばしたかった。巻いたときのクルクルが好きだし、伸ばしてから強くなったので、五輪までは願掛けで伸ばそうと思っています。今はもう胸下くらい。毛先を整える以外は、一度も切っていません」

 -女性アスリートとして結婚や出産はどう考えるか。

 「少し前までは『女の子になりたい』『結婚したい』『早く子供ほしい』と思っていました。でも連覇を狙った昨年11月の世界選手権で負けて、そういう気持ちが一切なくなった。いろんな試合を経験してきたけれど、あの銀メダルは今までにないほど苦しく、どう立ち直っていいのか分からなかった。自分が今までやってきた空手が間違っていたのかとも悩みました。でもそうは思いたくない。きっと頑張り方が違ったんだと思ったとき、今自分が集中すべき場所は空手だと思い至りました。自分が負けたことでたくさんの人をガッカリさせてしまったから。五輪で優勝するためには、生半可な気持ちでやるべきではない。それに今は、自分の時間がすごく大事だし、充実しているので楽しいんです。五輪まではこれが大事。自分がどれだけ一番上へ上りつめるために、成長して強くなれるか。そこにフォーカスすべきだと思っています」

 -残りの500日をどう過ごしていきたいと考えているか。

 「今は自分をサポートしてくれるフィジカル、栄養、空手のコーチがいて、ナショナルチームの担当コーチもいてくれます」

 -チーム植草ですね。

 「はい、10人ほど、みんなで取りに行く東京五輪です。世界選手権で負けるまでは、結局は自分が勝たないといけないという気持ちが強かったけど、それだけじゃ無理だと気付いた。世界選手権で負けた一週間後、自分で決めてお願いをし、その後、皆さんに集まってもらいました。忙しい中、自分が勝つために話し合ってくださって。(金メダルへの)道のりが自分の中で見えたんです。ダメなところを客観的に見たコーチたちの意見、空手をやっていないフィジカルの人からの意見、ケアの先生の意見など、意志の共有をし、一致団結する。クリアすべきことを一つ一つクリアしていく。そうすれば絶対優勝できると思えた。だからあの負けから立ち直れました。同時に、みんなのためにも勝ちたい、この人たちの愛に応えたいとも思いました」

 -具体的には。

 「最近は高校生の男子選手と練習をやるようにしていて。勝てるように、自分の技が入るようになったら、絶対女子には負けるわけないと思っています。今、男子トップの選手と練習するときは、自分に対して手を抜いてやってくれるけど、それもすごく屈辱。悔しい。ボコボコにされます。何をしてもかなわない。でも振り返れば、帝京大に入ったばかりの1年生の時、4年生の世界チャンピオンの先輩(小林実希)に対して、先輩は自分より背も低いのに何をしてもポイントが取れなかった。でも4年後、先輩に勝って全日本で優勝することができたんです。あと500日しかないけど、男子に勝てる強さを身につけたら、五輪優勝も実現できると思います」

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