日本相撲協会 暴力問題再発防止検討委員会が会見 暴力を受けた力士は約5%

 日本相撲協会の第三者機関、暴力問題再発防止検討委員会の但木敬一委員長(元検事総長)らが19日、東京都墨田区で最終報告として記者会見した。同委員会は元横綱日馬富士による十両貴ノ岩(千賀ノ浦)への傷害事件などを受けて2月に設置。過去の暴力事例に関し親方、力士ら900人の現役協会員と個別面談し、元協会員51人を電話などで約8カ月間調査した。

 相撲界の暴力問題はこの40年間、減少傾向にあるとの調査データは示された。暴力を受けたと回答した割合は78年に37パーセントが17年には5・2パーセント。特に07年の力士暴行事件から10年は確実に減少が進む。

 暴力は同じ部屋に所属する兄弟子から弟弟子に対するものがほとんど。多くは素手ながら骨折、歯が折れる等など重症に至った例も少なくなかった。ちゃんこ番、掃除、日々の生活態度、生活指導の場面で暴力が用いられる傾向があった。

 暴力を受ける側は入門1~3年目にかけての力士が多数を占める。入門4~6年目に暴力を振るった経験がある力士は半数を占め、暴力を振るわれた側が振るう側に転化する傾向が見られた。

 原因としては大相撲において歴史的に暴力は指導手段としてあったこと、力士らに暴力を容認、許容する意識が残ること、厳格な上限関係、相撲部屋ごとに暴力への対応がまちまちで結果的に相撲協会の関与が不十分などが挙げられる。

 元日馬富士の事件に関しては特殊な例として議論された。力士らの指導は通常、部屋単位、師匠によって行われるのが大原則ながら、横綱白鵬(宮城野)が部屋の異なる貴ノ岩、照ノ富士に対し、日頃の態度を説教。日馬富士も部屋の異なる相手に対し暴力を振るった。同席したモンゴル出身力士らの間に所属部屋を越えた指導・被指導の上下関係があったと認定した。

 大相撲の国際化に伴う問題でもある。調査では平成以降の不祥事数(各種メディア報道)のうち、日本出身力士は3割に対し外国出身力士は7割と高い。横綱、大関ら番付上位の不祥事も多い。言語に加え、技量向上に力点が置かれ、相撲文化への理解、礼儀作法、品格を体得する機会を十分に与えられていないことを原因とした。

 暴力を受けた5パーセントは人数にすれば約45人と少ないとは言えない。これらの調査結果を踏まえ但木委員長は「(現在の暴力を受けた割合)5パーセントを根絶するためにはどうすればいいか」と相撲協会に再発防止策を提言した。

 師匠に対しては研修の実施、年寄資格要件の明確化、審査手続き導入の必要性を訴えた。力士に対しては新弟子、兄弟子、関取と段階別の研修の実施を求めた。

 相撲協会には、暴力事案に対し、師匠による報告の義務化、通報窓口設置、処分規定の制定、コンプライアンス委員会による調査など多数の案。特にコンプライアンス委員会の委員には一門の親方だけでなく半数以上を外部からメンバーとすることを要望。「外部委員には拒否権というか、特別議決権を持たせ透明性、社会性を持たせるべき」と但木委員長は力説した。

 最近は元横綱朝青龍を始め、今回、元日馬富士、さらに白鵬まで暴力現場の当事者ということで横綱に対しても何らかの施策が必要と同委員会は意見をまとめた。

 相撲道に最もまい進し、品格を重んじる立場にある横綱が品格、礼節に欠ける言動が目立つ傾向を確認。横綱在位が長期にわたると、初心を忘れ自己の地位に関する過信がある。但木委員長は「白鵬は2度も判定に対する不満。1度目でしっかりやっていれば」と断じた。対策として横綱審議委員会の機能を十分に発揮させ、品格に関する考え方を再確認させ、特別指導を実施するべきとした。

 同委員会はこの日をもって解散となる。最終報告の提出を受けた八角理事長(元横綱北勝海)は「但木委員長をはじめ委員の皆様には長期にわたり調査、検討を重ねていただき深く感謝申し上げます。報告書に書かれたご指摘のすべてを真摯(しんし)に受け止めます。暴力事案に対処する規定等の整備に加え、師匠の指導力向上、外国出身力士への対応などについてもご提言をいただきました。ご提言に従い、今後も外部の有識者の意見を取り入れながら暴力の根絶に全力で取り組みます」と、広報を通じ談話を発表した。

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