稀勢の里、再起の道のり険しく…連合稽古で琴奨菊に6勝10敗
「大相撲夏場所」(13日初日、両国国技館)
左大胸筋負傷で6場所連続休場からの再起を目指す横綱稀勢の里(31)=田子ノ浦=が8日、二所ノ関一門の連合稽古に参加し、幕内琴奨菊(34)=佐渡ケ嶽=に6勝10敗と負け越した。
入門時より稽古を重ね、出世を争ってきた相手。大関同士の頃は一門内でのライバル。自身は横綱となり、相手は平幕まで落ちた。互いに酸いも甘いも知る相手に完敗だった。
いきなり右から突き落とされ、簡単に前のめりにバッタリ手を付いた。その後も立ち合い踏み込まれると、後退。棒立ちになりがぶられて寄り切られた。
「あー」、「くそー」、「うー」と悲鳴、うめきが稽古場に何度もこだました。2勝7敗からスタミナを生かし、6勝8敗まで持ち直したが乗れない。左を簡単に差され寄り切られると、最後も無残に押し出され、稽古は終了となった。土俵脇でぼう然とし、ショックをあらわにした。
負の流れが断ちきれない。3日の横綱審議委員会で3勝5敗と精彩を欠き、4日、春日野部屋の出稽古では2勝8敗と惨敗。5日は出稽古予定を回避し、6日は何と風邪で稽古を完全休養した。
前日の連合稽古で幕内嘉風(尾車)と9番取り全勝。復調気配は見せたが、体力差を生かした相撲が目立ち決して安心はできなかった。元横綱で解説者の北の富士勝昭氏(75)、元小結で相撲解説者の舞の海秀平氏らが状態の悪さを指摘した。
前日同様、この日も見守った一門の親方衆は厳しい声が出た。芝田山親方(元横綱大乃国)は「昨日と一緒。何をしたいのか。(左を)差すのか、右で上手を取るのか、押すのかバラバラ。気持ちと体がかみ合っていない。原点に1回、戻らないと」と酷評した。
技術的にも仕切りの際、腰が割れず、重心が後ろにかかっているため、押されると残れない悪い形になっている、という。「仕切りとか、足の出方とか。自分を見失っている。検証して見つめ直さないと」と助言した。
尾車親方(元大関琴風)は「押させて、試しているならいいけど、めいっぱいなら困る。早く攻められると腰が伸びて何もできない。総見の日の負けを本人がどうとらえるかだね。あと半年すれば完ぺきになるのか。どっかで踏ん切って出て来ないと。今あるものを全部使ってやるしかない」と、左の負傷はもう言い訳にできないとの考えを示した。
本人はさすがにトーンが上がらない。「やるだけです。大丈夫。まあしっかりやるだけ」と険しい顔。やるべきことをできたか?と問われると「どうだろう。またこれからだね」と言葉少な。夏場所休場となれば、貴乃花に並ぶ横綱最多タイ7場所連続休場となる。