稀勢の里、光が見えない 土俵下に吹っ飛ばされぼうぜん…休場崖っぷち

 「大相撲初場所・5日目」(18日、両国国技館)

 横綱稀勢の里(31)=田子ノ浦=が平幕嘉風(尾車)に押し倒され、3日連続金星配給で4敗目(1勝)を喫し、5場所連続休場へ崖っぷちに追い込まれた。同一横綱が2場所続けて3日連続で金星を配給したのは、1930年10月場所と31年春場所の宮城山以来2人目。横綱が5日目までに4敗を喫するのは1953年春場所の千代ノ山以来、65年ぶりの屈辱だ。4場所連続休場から再起を目指し、この日も強行出場を決めたが光は見えず、進退問題も現実味を帯びてきた。

 稀勢の里は土俵下に吹っ飛ばされ、腹ばいになって動けない。結びの一番、無残な負け方に館内からは悲鳴が上がり、横綱が敗れても座布団は舞わなかった。嘉風が心配そうに手を差し伸べに行くと、ぼうぜんと立ち上がり、うつむきながら花道を引き揚げた。

 自分の相撲を見失っているとしか思えない。低く当たってきた相手の速さに体勢を崩し、いなされてもろ差しを許した。強引に抱えて出たが体を入れ替えられると棒立ち。なすすべなく崩れていった。

 支度部屋ではうつろ。何を聞かれても無言だった。取組を見守った師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)は「勝負どころで足が出ない。必死に残そうとしていたけど。一番本人が苦しいし悔しい。一人で戦っているわけじゃないけど一人で背負い込んでいる。一番は自信を持っていくこと」と思いを代弁した。

 昨年初場所で初優勝し日本出身では19年ぶり横綱昇進。稀勢の里フィーバーが全国を席巻し絶頂を味わった。あれからわずか1年で屈辱にまみれている。

 通算12個目の金星を配給。2場所連続で3日連続の金星配給は30年10月、31年春場所の宮城山以来87年ぶり。5日目までに4敗した横綱は53年春場所の千代ノ山以来65年ぶりで、年6場所制となった58年以降では初。負の横綱史に名前を刻んでしまった。

 昨年春場所で左上腕部などを負傷。それまで15年の土俵人生で1日しか休場のなかった“鉄人”が左足首、腰部と次々と痛めた。悪循環に陥り4場所連続休場で昨年を終えた。

 どん底から再起へ、今場所前は並々ならぬ決意だった。連日30番を超える稽古でいじめ抜いた。出稽古で苦手意識のある嘉風、北勝富士を指名し入念に準備。「やることはできた」と自信があった。

 しかし現実は厳しかった。場所前、横綱審議委員会(横審)はまだ「猶予」はあるとしたものの、5場所連続休場なら進退問題は避けられない。史上最短タイの横綱在位6場所で引退の可能性すら浮上してくる。

 この日の朝稽古。「(状態は)悪くはない。やると決めたら最後までやり抜く」と強行出場を明言。帰り際に「朝の言葉に変わりはないか」と聞かれ、小さく「うん」とうなずいた。玉砕覚悟で15日間フル出場を目指すのか。崖っぷちで決断が迫られる。

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