【専門家の目】頭部骨折の貴ノ岩…病名から見れば全治1カ月以上の重症

 幕内優勝9回を誇る大相撲の横綱日馬富士(33)=伊勢ケ浜=が14日、幕内貴ノ岩(27)=貴乃花=への暴行を認めて謝罪した。10月下旬の秋巡業中、鳥取での宴席で酒に酔い、ビール瓶で頭を殴打した。貴ノ岩は前日、「右中頭蓋(がい)底骨折、髄液漏の疑いなど全治2週間」の診断書を提出。すでに鳥取県警に被害届も提出している。病名から松本クリニックの松本浩彦院長に見解を聞いた。

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 たくさん病名が並んでいますが、おでこの左あたりに真上からビール瓶を叩き付けた、という状況だったのでしょう。衝撃で気を失ったから脳振とう。そのとき皮膚も裂けたので前頭部裂傷。

 問題はここからです。頭蓋骨は3~5ミリの厚さの平べったい骨で、その底面にヒビが入った状態が頭蓋底骨折です。ほとんどの場合、髄液漏か脳神経麻痺(まひ)のどちらかを合併します。外耳道炎とありますから、脳を包んでいる硬膜も裂けて脳脊髄液が右の耳の穴から漏れ出ています。

 髄液漏の治療はまずは絶対安静で自然治癒を待ちます。髄液の漏れが止まれば外耳道炎も一緒に治まります。2~3週間で髄液漏は止まるものですが、1カ月たっても止まらないときは外科的処置が必要になりますので今の時点ではまだ分かりません。

 うまく髄液漏が止まったとしても、ご存じの通り骨折が治るには一カ月以上かかります。髄液漏にしても、細菌が逆行して髄膜炎を起こす危険もあります。脳神経麻痺もこれから症状が出てくることがありますから要注意です。

 診断書では全治2週間とされているようですが、それは診断書を書いた日からのことで、病名から見れば全治1カ月以上の重症です。

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