稀勢の里、土俵際“1本足”から大逆転 危な勝った…

 「大相撲夏場所・3日目」(16日、両国国技館)

 左上腕部などに負傷を抱える横綱稀勢の里はヒヤヒヤの執念星をもぎ取った。平幕千代の国の患部への執ような攻めに何度も追い込まれたが、しのぎ切って押し出し連勝。1937年の双葉山以来、80年ぶりとなる初優勝から3連覇の夢実現へ、土俵際で踏ん張った。また白鵬、鶴竜、日馬富士も勝ち、4横綱が今場所初めて白星そろい踏みとなった。

 最後の一歩が出た。ギリギリ、もろ手は届いた。千代の国を押し出した稀勢の里は腹から土俵にバッタリ倒れた。力を出し尽くした激闘に、ひざまずいて数秒動けなかった。

 患部への非情攻めだった。左に回り込まれ、左腕を徹底的に封じられた。飛び込まれてまわしを取られて後退。苦し紛れに抱えた左で小手に振ったが、逆に体は半身になった。

 土俵際、追い込まれて右足1本で耐えた。万事休すの状態で相手が引いた。わずかに見えた勝機を逃さなかった。出足一気。がむしゃらにもたれ込んで、逆転星をつかんだ。

 支度部屋ではヒヤリとしたか?の問いに、「うん」とうなずいた。残せた要因には「何があるか分からない。最後までね」と言い、執念が上回った。

 9キロ増の人生最重量184キロの進化した肉体。1カ月のリハビリで鍛え抜いた自慢の下半身のたまものだ。「いい状態でやれていますよ」と攻めをしのぎきった足を誇った。「ここ(スタミナ)しか自慢がない。まだいける(動ける)感覚はあった。まだ若いから」。15秒8のサーカス相撲は体力勝ちだった。

 日本出身では貴乃花以来、16年ぶり東正位横綱に就いた。前売り券は発売即完売する大フィーバー。故障を抱えながら人気と期待を一身に背負う。それでもプレッシャーを意に介さない強さが今の稀勢の里にはある。

 この日の朝稽古後、患部に巻くテーピングに関し記者から問われると、「1回巻いてきたら?どこだろ?」とニヤリ。そして頭にくるくる巻き付ける仕草をすると、「がっはっは」と大声をかけて笑った。厳しい戦いとなる今場所への覚悟を問われると「いつもそういう気持ちでいる」と、力を込めた。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「見応えがあった。苦しい相撲でも勝っていけば上がる」と良薬となる勝利の積み重ねを求めた。

 満足に動かない左腕への攻撃も力士によって多種多様。4日目の遠藤も技術があるだけに、手負いの横綱はどうしのぐのか-。「しっかり集中して、切り替えていく」。稀勢劇場から目が離せない。

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