急速に高まった横綱昇進の機運 「和製」待望論が後押し

 初場所終盤から急速に稀勢の里の横綱昇進機運が高まり、横綱審議委員会でも異論は出なかった。昨年の年間最多勝に輝いた安定感もさることながら、角界の「和製横綱」待望論が異例の昇進を強く後押しした。        

 先場所の稀勢の里は、14勝1敗で優勝した横綱鶴竜に次ぐ成績だったものの、12勝にとどまり、今場所前の綱とりは表だって取りざたされなかった。だが、日本相撲協会のある理事は「優勝したら横綱になるぞ。強いし、人気もある。あいつの場合、毎場所が綱とりだから」と話していた。

 平成以降に誕生した横綱9人のうち、昇進前の2場所で連続優勝していないのは2014年の鶴竜しかいない。その鶴竜も優勝できなかった1場所は優勝決定戦で敗れた。横綱に昇進するための明確な基準はないが、この点、稀勢の里は見劣りする。番付編成を担う協会審判部の二所ノ関部長(元大関若嶋津)は「今場所で上げたら周りはどう言うかなあ」と世間の空気をうかがっていた。

 合意形成へ、審判部は水面下で動いた。通常は千秋楽の午前中に開く臨時会議を、14日目に極秘に招集。その場で13勝でも初優勝なら昇進との案をまとめた。ある審判委員は「(翌日の)取組編成の会議中に予告なしで『優勝したら昇進と思っているが、みんなはどうだ』と聞かれた。今までにないケースだ」と打ち明けた。

 稀勢の里は期待に応え、千秋楽の横綱白鵬戦を制して自己最多の14勝を挙げた。一方で、本人に責任はないが、今場所は対戦相手に恵まれた面も否めない。

 正念場の終盤戦にぶつかるはずだった鶴竜、日馬富士の2横綱と大関豪栄道が相次いで休場。その結果、11日目以降は平幕3人と対戦したほか、豪栄道戦の不戦勝もあった。激戦の6大関時代を経験したブルガリア出身の鳴戸親方(元大関琴欧洲)は「やりにくい相手とほとんど当たっていないよ」と苦笑いする。実際、審判部内でも「もう1場所待って、上位陣全員に勝って『どうだ』という方がいい」との慎重論もあった。

 そんな意見も、不祥事で一時は大きく低迷した大相撲人気の完全復活を願う関係者の思いにかき消された。昨年は年間90日で88度の満員御礼を記録し、一昨年の86度を上回った。初場所は15日間とも満員札止めとなり、終盤戦は徹夜で当日券を求めるファンもいた。和製横綱は、人気定着の切り札とみられている。

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