“元祖・天才少女”伊藤有希が銀

 「スキー・ノルディック世界選手権・ジャンプ女子」(20日、ファルン)

 ジャンプ女子で伊藤有希(20)=土屋ホーム=が89メートル、93メートルの合計235・1点で銀メダルを獲得した。今大会の日本勢メダル第1号となった。前回大会2位の高梨沙羅(18)=クラレ=は4位に終わった。複合個人ノーマルヒルではソチ五輪銀メダルの渡部暁斗(北野建設)は6位、弟の善斗(北野建設)が7位に入った。

 大舞台でやっと勝負強さを発揮した。伊藤が2位となり、世界選手権4度目の出場で初の個人メダルをつかんだ。「うれしいというより、悔しい気持ちの方が強い」。フォクトと1・8点差で頂点を逃したことに未練をのぞかせながらも、所属先の監督でもある男子の葛西からうれし涙で祝福され、満面の笑みを浮かべた。

 1回目は「タイミングが遅れた」とK点に1メートル届かず4位。だが、2回目はきっちり修正した。ほぼ無風の中、スムーズに踏み切り、高梨と並ぶ最長不倒の93メートルを飛んで順位を上げた。

 2歳年下の高梨の台頭で近年は陰に隠れがちだったが、小学時代にラージヒルを飛んだ“元祖・天才少女”だ。北海道・下川商高を卒業後、土屋ホーム入り。葛西を手本に今季から空中姿勢で手のひらを下に向けるスタイルを取り入れ、「葛西さんの経験が私の道しるべになっている」とうなずく。

 成績が上がらずに苦しいときも、条件に恵まれなかったときも言い訳はしないと決めている。『風を恨まず運命を常に自分で切り開く』の歌詞がある葛西の応援歌を聴いて気持ちを切り替えてきた。

 W杯は4位が最高と今季は歯がゆい成績が続いていたが、初の表彰台が世界選手権となった。それでも満足はしない。「(この先に)金メダルを取るための銀メダルだったと思う。まだまだできることはある」。悔しさを成長の糧としてきた二十歳の瞳には、一層の飛躍がくっきりと映っている。

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