伊調がV11、天国の母に捧げた!

 「レスリング・全日本選手権」(23日、代々木第二体育館)

 母へ、父へ、捧げるVだ。女子58キロ級では63キロ級で五輪3連覇の伊調馨(30)=ALSOK=が、決勝で川井梨紗子(至学館大)を6-0で破り、63キロ級、昨年出場した59キロ級と合わせて11度目の優勝を果たした。11月28日に母トシさん(享年65)が急死。大きな悲しみを乗り越えての制覇となった。今年3月に父栄勝さん(享年61)を亡くした女子53キロ級の吉田沙保里(32)=ALSOK=も圧勝で、55キロ級を含め2年連続12度目の優勝を飾った。

 試合後、すぐに浮かんだのは亡き母トシさんの顔だった。伊調は決勝を6-0で完勝。ただ、第2ピリオドは相手の猛攻に防戦を強いられた。決して自分が目指すレスリングができた訳ではなかった。日頃から「死んでも勝て!」と厳しかった母に向けて、「お母さんのせいで勝ちにこだわりすぎたよ」と少しだけすねた口調で話した後、「でも、ありがとうっていいます」と笑みを浮かべた。

 11月28日に最愛の母トシさんが、青森県八戸市内の自宅で頭を打ち、脳挫傷で急逝した。伊調は都内から駆けつけ、最期を見取ることはできたが、大きな悲しみに襲われた。「自分がこれから(レスリングを)できるのか、とも思った」。

 心の整理は母との“会話”でつけた。「母ならこういうかなっていうのをいつも考えた。『私のせいで出なかった』となったら、絶対に悲しむと思うし、出て勝つことが一番喜ぶと思った」。いつの間にか練習にも熱が入り、再びマットへ立つ準備はできていた。

 今大会は4連覇の掛かる16年リオデジャネイロ五輪第1次選考会を兼ねている。文字通り刻んだリオへの第1歩。「これからは母の『死んでも勝て!』プラス、自分のレスリングを追求していきたい。最終的にリオでいい試合ができれば」。天からの母の“喝”を胸に刻みながら、絶対女王は歩み続ける。

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