『日本一2軍』にも浸透していた“石井イズム”

 18日に始まるクライマックスシリーズ(CS)ファイナルを前に、カープ2軍が一足先に日本一を決めた。26年前の1991年に“アベックV”を果たして以来の2軍制覇だったが、その余勢を駆って7日に宮崎で行われたファーム選手権でイースタン王者・巨人を破って球団創設初の快挙を達成した。2点のビハインドを七回に一挙5点を奪っての逆転勝ち。“逆転のカープ”と言われる1軍のお株を奪う見事な勝利だったように思う。

 今年、何度か2軍の試合が行われている山口・由宇に足を運んで“水本カープ”の戦いぶりを見てきた。1軍の方はその爆発的な打力と強力な中継ぎ陣が連覇に大きく貢献したのだが、2軍の方も特徴的だったのは破壊力のある打線だった。シーズン途中に支配下選手登録されたバティスタとメヒアの両外国人選手を核にして、桑原や庄司、美馬、土生といったところが力を発揮して強力打線を形勢。1軍とは違い、チーム防御率はウエスタン最下位だったが、それを打力でカバーし、見事な結果につなげた。

 シーズン中、水本監督は「とにかく三振を少なくしよう。バットに当てれば何かが起こるから」と選手に話していたというが、かといって画一的な指導ではなかったのは言うまでもない。昨年の秋季練習からキャンプ、そして今年の春季練習にかけて、1軍の石井琢朗打撃コーチが選手に『バットを振る意識』を徹底的に教え込んだ。通常の早出よりも早い“スーパー早出”や、全練習終了後の“スーパー居残り”を強化選手には課した。シーズン中の遠征なども時間と場所さえあれば振り込ませ、それに付き合っていたという。そんな熱い石井コーチの姿は朝山2軍打撃コーチらに大きな影響を与えた。

 由宇に行った際、その彼が「琢さんは本当にすごいですよ」と話していたのを聞き、1軍で花開いた“石井イズム”が2軍にもしっかり浸透していることを実感した。石井コーチに仕込まれた若い選手が1軍で活躍する光景を見て、2軍の“予備軍”たちも「よし俺も!」と、さらにモチベーションを上げて取り組んだ。熱心な指導をするコーチ陣と、向上心と野望に目をぎらつかせる選手たちが一体になって勝ち取った日本一だった。

 私が現役だった頃、2軍監督は内田順三さんだった。内田監督は2軍でも一貫して勝ちにこだわっていたように思う。今の水本監督が「若手の育成と1軍クラスの調整」を重視しているのとは対照的。そんな内田さんが巨人2軍を率いて古巣とファーム日本一を争ったのだから、別の意味でも興味深かった。巨人のメンバーを見ると、1軍でもそれなりに結果を出している選手がズラリ。内田さんが本気で勝ちにきていたのがわかった。だが、結果は「育成重視」の水本カープが逆転勝ち。しかも、高橋昴-坂倉という高卒ルーキーバッテリーが大活躍してのものだけに、カープ側にすれば痛快だったに違いない。

 先発して7回2失点の好投を見せたドラフト2位の高橋昴に、7回勝ち越し3ランを放ってMVPに輝いた同4位の坂倉。この2人の活躍に、3連覇を目指す来季の明るい光を感じたのは私だけではないだろう。それはともかく、本当の日本一を目指す兄貴分の1軍も彼らの上をいくパフォーマンスを期待したい。

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