能見、1回ピシャリで評価急上昇

 「WBC・1次ラウンドA組、日本5‐3ブラジル」(2日、ヤフオク)

 3連覇が懸かる日本代表はブラジル代表に辛くも逆点勝ちし、大会初戦を白星で飾った。八回に代打出場した主将・阿部慎之助捕手(33)=巨人=の強烈な二ゴロで勝ち越すと、その裏は能見篤史投手(33)=阪神=が、1回を3人でピシャリ。格下とみられた相手に苦戦を強いられながら、何とか勝利をものにした。

 注がれる大歓声と共に小さく握った左手に、表情に出さない感情が見えた。死に物狂いで手にしたリードは渡せない。ようやく一塁側に傾いた流れを一気に加速させた。能見が八回の1イニングを、テンポ良く鮮やかな3人斬り。12球でブラジルの反撃の意欲を断ち切った。能見が華麗に舞った。

 「いい流れで来てたんで、良かったです。緊張感はありましたけどね」

 2点のリードを奪った直後の八回のマウンドで、冷静に燃えた。2番からのブラジル打線。先頭のブリンにはフルカウントからの143キロ直球で二ゴロに打ち取ると、そこまで3安打のレジナットを一飛に。最後はユウイチを変化球で空振り三振に仕留めた。

 本職は先発ながら、終盤の必勝リレーの起用に完璧に応えた。この日の最速は144キロ。美しくしならせた腕の振りから、バランス良く指にかかったボールは本来のもの。もちろん、簡単にWBC球を操れるようになったわけではない。

 戦いはオフの段階から始まっていた。例年、1月の自主トレから打撃投手を行って肩を作るが、今年はそこでバッティング用の汚れて滑りやすいボールを意図的に多く使った。キャンプ中のブルペンで統一球を使う時も、同じように滑りやすくしたボールを使用した。

 能見は「ボールを少しでも滑るようにしてね。慣れていかないと」と狙いは明かす。その中で自主トレと、2週間のキャンプで1000球近い投げ込みを敢行。肩や肘に張りを感じながらの、ケガと隣り合わせの調整も全ては日本のため。工夫と努力が結果に表れた。

 山本監督は「素晴らしい腕の振りでいいピッチングをしてくれた。今後は先発もありうるということで1イニングにした」とたたえた。この好投で、6日のキューバ戦、そして2次ラウンドでも先発する可能性がある。

 試合後も淡々とした表情は変わらない。「リリーフなんで、失投は許されないんで。勝って良かったです」。ゴールはまだ先。戦いはこれからだ。感情を爆発させるのはまだ早い。

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