【32】ようこそ西宮市へ ボランティアで人文字PRとファンサービス

 「日本高野連理事・田名部和裕 僕と高校野球の50年」

 2000年の年明け間もない頃だった。連盟事務局に「西宮青年会議所(JC)」の幹部数名がやってきた。

 全国に西宮市をもっと知ってもらいたいので市内観光名所や史跡のイラスト入りマップを来場者に配りたいという。

 幹部の1人は小さい頃「甲子園」は大勢人がやってきて電車は込み合うし、余り良い印象を持っていなかった。しかし、社会人として各地に仕事で行くと「西宮からきました」「ああ大阪ですか」となり悔しく思った。「いえ甲子園のある兵庫県西宮市です」と返すと、「甲子園は兵庫県でしたか」とようやく認識してもらえたという。そこで西宮市をもっとPRをしたいという。

 でもお断りした。

 来場するファンの多くは、試合が終わったらすぐに球場を後にして市内を見学する時間がないこと、そして何よりチラシを持ち帰る人は少なく、ゴミとして捨ててしまう。主催者として、余分なゴミの発生は抑えたい。

 がっかりする訪問者に対案を出した。

 「ゴミにならずに、来場者だけでなく全国に西宮市をアピールする方法があります」

 「???」「高校野球の応援で名物になっている人文字です」

 開会式の時、外野スタンドで市民からボランティアを募って人文字をつくる。スタンドに浮かんだ人文字は来場者から拍手も起きるし、TVやメディアを通じて全国に伝わる。

 西宮JCで早速行動に移された。当日朝のわずかな時間で人文字を練習し、整然と描くにはどうすればよいか、文字数は四文字として何人必要か、熱中症対策は、など多くの課題を、西宮JCスタッフの若いエネルギーで見事に克服した。以後昨年まで15年間続けられ、その後は地元の学生や高齢者の皆さんも加わった「西宮をPRする会」に事業が引き継がれた。

 「ようこそ 西宮市へ」、「甲子園へ」今やすっかり開会式のイベントとして定着した。

 実は最初に相談を受けた時、もう一つ提案した。もちろんゴミにならない方法で。

 それは球場正面でのシャッターサービスだ。観光地で記念写真を撮りたい時、道行く人に声をかけてお願いする、あれだ。「西宮市」のタスキや腕章をして来場者にサービスする。それをきっかけに対話が始まる。そこで「西宮市民のボランティアです」とPRする。郷里に帰って写真を見るたびに思い出してもらえるかもしれない。

 大会本部からプラカードを貸し出し、応援する学校のプラカードを持って記念写真が撮れるようにしている。この春までにすでに24万回を超えた。

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