香川・クリス 4番を指定席に…長打力磨いてさらなる進化を目指す
【高知・クリス内野手】文=高田博史
前期最終戦の先発オーダーに「4番・クリス」の名前があった。惜しくも3割は切ってしまったが、チームトップとなる打率・293を残し、前期を折り返している。
「やっぱりホームランを打たないとダメなので。アンダーソン(高知)が5本じゃないですか(1位)。僕が2本で。ざっと考えて、半分の実力だなと……」
それでも昨年の打率・187、本塁打1本と比べれば、大きく成長している。2カ月の中断期間はさらに打撃を、特に長打力を磨く。
変わった練習方法を教えてくれた。外野ノックを打って、打球の上がる角度、ボールの捉え方のイメージを作るのだそうだ。
毎日のように動画を送って、打撃フォームをチェックしてもらう先輩がいる。昨年、香川に在籍した冨田康祐(元DeNA)だ。
家業を継ぐため実家のある愛知に戻ったが、いまでも「参考にして」とメジャーリーガーの動画などが送られてくる。外野ノックも冨田のアイデアである。
「日本人なのに、向こうの選手のようなバッティングができれば有利じゃないか」と励ましてくれる。
父が日本人、母がメキシコ人。名前も2つ持っている。「クリス」はメキシコ名を縮めた愛称だ。友達からずっと、そう呼ばれてきた。
就職か野球かで迷った大学時代、監督の「悔しかったらプロになってみろ!」の一言で、アイランドリーグ挑戦を決めた。
「とにかく何か目立たないといけない。『クリス』なのに兵庫県出身。しかもカッコで稲垣将幸。これは僕の武器だなと思って」
西田真二監督(元広島)から「3割打ってもダメ!」と言われる。前期は8番が多かった。前期終盤、2号本塁打を打ったあたりから、4番を任せられている。
「監督を満足させられたら多分、僕はNPBに行けるんだと思うんです。あの人は絶対、目線を落とさない。僕が3割打ってても『それじゃあ上には行けないよ』っていう意味で言ってくれていると思うので」
4番を指定席に、本塁打量産を目指して。厳しい叱咤(しった)の声の中から、進化のためのヒントを探す。