昨年の厳しい評価を変えられるか
【徳島・入野貴大投手】
昨年の秋、あるNPB球団でスタッフを務めるアイランドリーグの元投手と夕食をともにした。
「入野君が全然変わっていない。20歳やそこらであんないいボール投げてて、どんな投手になるのかと思ってたのに…」
“失望”とも取れる厳しい評価を聞き、返す言葉がなかった。
当の本人である入野貴大は今季、愛媛から徳島への移籍を決めた。5年間いろいろなことをやってきたが、結果が残せていない。どこかに「まだ後がある」という気持ちがあったことも事実だ。
徳島の一員となってすぐのころ、非常にピリピリとした近寄りがたい空気を放っていた。
「緊張してましたね。仲間なんですけど全員ライバルだと思っているので。慣れたらもう、これからの自分もダメになる」
徳島で任されたポジションは、愛媛時代と同じセットアッパーである。きっちり3人で抑え、良い流れで九回につなぐ。5月に入り、マウンドから不安定さが消えた。
「変わったのは『考え方』ですかね。“力む”と“力を入れる”とを間違えてた」
愛媛時代の11年、変化球に頼りすぎる意識を矯正するため、フォークボールを禁止されていたことがあった。だが、今は自然と変化球に頼らない投球ができている。
「フォークのサインもあまり出ない。そこら辺は成長したと思います」
「徳島に来たから」というより「これまですべての積み重ねの結果」と話す。最速146キロ。NPBにアピールできる武器はこのストレートだ。
「絶対的な“中継ぎのエース”みたいな存在になりたい。シレットにも、カープから来てる小松さん(剛、広島育成)にも負けたくないと思っているので。ここからどんどん上げて行きます!」
6年目の24歳は勝負の夏を迎える。今年の秋、元アイランドリーガーの彼に「入野君、変わりましたね」と言わせることができるだろうか。